「今後も特別措置支援欠かせず」

奄振法期限切れ 前に県、総合調査報告書
交流拡大方策 「自然・文化の地域資源活用」
国の審議会提出へ

  2018年度末(19年3月末)で期限切れとなる奄美群島振興開発特別措置法の延長に向けて、県は総合調査報告書を作成し、30日に公表した。諸格差の存在、人口減少が続く中、対策として▽人材の確保・育成および労働生産性の向上▽奄美群島が抱える条件不利性のさらなる解消―を図る必要があることから、「今後とも法に基づく特別措置による支援が必要不可欠」と指摘している。

 総合調査は、17年度、県が奄美群島の社会・経済の現状、課題および奄振事業の成果等を総合的に調査し、今後の振興開発の方向・方策を明らかにしようと実施。今回、新たな試みとしては、世界自然遺産登録や広域観光等に識見がある民間有識者の意向調査にも取り組んだ。

 報告書は、「奄美群島振興開発の概要と群島の現状・課題」(第Ⅰ編)と「今後の奄美群島振興開発の方向」(第Ⅱ編)で構成。現状・課題のうち、交流拡大のための方策では「奄美ならではの自然・文化等の地域資源の活用」を挙げている。具体的には、①地域資源を生かした観光施策の展開②愛着を育む地域文化の継承、創造③群島内外との交流の促進―で、このうち観光施策展開では世界自然遺産登録に向けて群島が一体となった取り組みをさらに推進していく必要があるとしている。

 登録を見据えた取り組みの推進では、「アマミノクロウサギ等の希少種のロードキル(交通事故)の状況把握およびその対策の検討や希少野生生物の盗採等への対策の検討」「外来種では、ノイヌ・ノネコの具体的な対策の実施など植物も含めた計画的な駆除等検討」「質の高いエコツアーを提供するため、全体構想に基づき、登録ガイド・認定ガイドの育成、ツアーの受入体制の整備等」の必要性を挙げている。地域環境の保全、循環型社会の形成、自然環境配慮型・自然再生型公共事業等の実施も求めている。

 今後の方向で、定住促進のための方策は「農業振興」「観光産業振興」「情報通信産業の振興」が柱。条件不利性の改善に向けては、▽運賃、輸送コストの軽減=航空だけでなく航路も含めた運賃軽減を継続するとともに、運賃軽減の拡充検討。また、消費地に農作物等を出荷する際の輸送コストの軽減を継続するとともに、加工品の輸送コストの軽減検討▽生活または事業活動に必要な物資の費用負担の軽減=ガソリン等の生活関連物資の物価の軽減措置を図るとともに、農林水産物の生産にかかわる原材料等の移入コスト支援検討。加計呂麻島、請島、与路島の島外車検に伴う車両航送費の負担軽減を図るための支援措置の実現に向けて取り組む▽防災および国土保全=群島住民の生命・安全確保のための情報提供体制の整備や、災害時の相互応援体制の充実など、奄美群島の地理的特性等を踏まえた防災対策を推進するとともに、治山、治水、砂防、海岸保全など災害に強い県土づくり推進―を挙げている。

 なお、県企画部によると、作成された総合調査報告書は、4月に開催予定の国の奄振審議会に提出される。審議会では、総合調査報告書などを踏まえながら、奄美群島の振興開発に関し今後とる必要がある措置について7月ごろ国に対し、意見具申が行われる見込み。