「徳之島の西郷」描く

中高生らが歴史・文化・伝統芸能をベースに「徳之島の西郷隆盛」をダイナミックに描いた「島口ミュージカル結」=3日夜、天城町防災センター
再遠島を命じられた西郷と、愛加那母子の別れのシーン
約2時間の生演奏ライブも担当した中高生バンド

中高生ら島口ミュージカル「結」

 

ダイナミックに伝統文化・現代音楽融合
延べ1200人魅了

 

【徳之島】徳之島の中高生ら「結(ゆい)シアター手舞(てまい)」(43人)の卒業公演『島口ミュージカル結―MUSUBI―』が1、2日の昼夜計3回、天城町防災センターであった。約150年前、薩摩藩から同島に遠島処分となった明治維新の立役者・西郷隆盛。大らかな島民たちとの交流など歴史、伝統文化・芸能、過去と現代を融合させたダイナミックな〝徳之島版ミュージカル〟を熱演。若い情熱が延べ約1200人の観客たちを大いに感動させた。

結シアター手舞は3年前の「第30回国民文化祭かごしま2015」で、「島口ミュージカル結―MUSUBI―」を初上演して、大反響を巻き起こした。中高生らの「このまま活動を終わらせたくない」との強い希望を天城町連合青年団や保護者ら関係者が下支えして翌16年2月に卒業公演を開始。日ごろは地域イベントを集団ダンスで盛り上げつつ、集大成の卒業公演に備え今年で3年目。本格公演は国民文化祭を含め4回目となった。

今回は、西郷を慕って志を共にして京都で〝客死〟した徳之島出身の青年、琉仲祐(徳嶋=とくのしま=仲祐)の死の真相(病死説のほかに、西郷と間違えた新撰組による暗殺説)にも焦点を当てた。西郷と愛加那母子との再会シーンなどにオリジナル新楽曲の採用。全生演奏・歌などライブも中高生バンドだけで担当。また、島の妖怪ケンムンによる島の紹介では、牛ナクサミ(闘牛)をはじめ稲作文化・儀礼に根差した伝統芸能の数々も網羅。当時の出来事をダイナミックに表現した〝徳之島版ミュージカル〟(約2時間)の3回公演で魅了した。

成功裏の終演あいさつで、西郷役を務めた琉大志さん(樟南二高2年生)は「舞台を後ろで支えて下さった町連合青年団や同OB・OG、お父さん・お母さん、地域の皆さんの応援のおかげ」と感謝。体調不良を押して仲佑役を最後まで演じきった福田一稀さん(同2年生)も「多くの人が助けと支えのおかげでこの舞台に立てた。結シアターの活動は自分の宝物です」と涙でアピールした。

観客の1人・熊山良子さん(62)=天城町=は「毎回感動して涙が。奥さん(愛加那)が徳之島に来て西郷と再会した後の別れのシーンには特に泣かされた。出演者ほとんどが顔見知り。島の子たちはやれば何でもできる、とあらためて感じた」と強調、感動の余韻に浸っていた。

保護者会の前田美香登代表(49)=同町=は「地域の多くの方々に鑑賞いただき、この子らの良さも分かっていただいてうれしい。応援協賛にも感謝。子どもたちはバレイショ掘りのアルバイトもした。私たちは次回公演にも頑張りたい。そして、子どもたちには『舞台を頑張ってくれてありがとう』と言ってあげたい」と目を潤ませた。