価値守るために④ 保全上の課題とは

環境学習で外来種駆除を体験する龍南中学校の1年生たち

現状把握や連携の必要性

 県自然保護推進員の宇都宮英之さん(龍郷町)は、龍郷小以外の町内の小中学校でも外来種問題を啓発し駆除などに取り組んでいる。昨年まで県道沿いに生えている生態系被害防止外来種指定のオオキンケイギクの駆除活動を毎年、秋名小や龍南中の児童生徒などに指導して実施してきている。

 6年以上の取り組みが実を結び、県道沿いのオオキンケイギクの群生は減少。龍南中生徒会が担当していた龍郷町久場の番屋地区では、目視できる株を完全駆除し今後は再発生しないかなどの経過観察に移行するという。

 宇都宮さんは、「これからの奄美の風景を作るのは子どもたち」と考えていて、学校での外来種問題の啓発や駆除活動を呼び掛けている。2017年は龍南中の1年生が、総合的な学習の一環で宇都宮さんや環境省職員などの指導で、環境学習として校区内の外来植物調査と駆除作業に取り組んでいる。

 ▽環境学習

 龍南中の環境学習では、▽地域の自然問題について考察▽環境への理解、課題解決に向けた研究の推進―などを目標として展開。昨年6月から10月にかけてモミジバヒルガオやグラジオラスなどの外来植物の分布状況をマッピングし、アメリカハマグルマやヤナギバルイラソウ、セイタカアワダチソウなど除去した。10月は外来種駆除と合わせて、固有種で絶滅が危惧されているアマミクサアジサイの観察も実施した。

 12月には、環境学習のまとめで校区内の外来植物の分布図を完成させた。分布図の作成後に、生徒たちは外来種調査や駆除体験の感想など話し合い、奄美大島の自然環境を保全するための取り組みについて意見を出し合った。提出された意見は冊子化して、18年9月に開かれる「町自由研究発表大会・環境教育シンポジウム」で、同校生徒が内容を発表する予定になっている。

 今後の活動に向け今年1月には、同校で宇都宮さんと環境省職員、町担当者、県大島支庁の担当職員が参加して学校側との意見交換が実施された。町担当者などは同校での取り組みについて、子どもたちの主体的な活動や外来植物の駆除の意義を理解している点などを評価。町担当者は「ゲーム感覚でできる要素を作れば、楽しむことができるのでないか」などとアドバイスした。

 宇都宮さんは同校の取り組みについて、手探りでの活動で完璧ではないとし、「外来植物へのアクションは住民や行政が一体となって動くべき。ほかの学校での実施も考えている」と振り返った。

 ▽水生外来植物

 山に新緑が輝く3月、宇都宮さんは龍郷町大勝の水田で特定外来生物のボタンウキクサの侵入を確認。環境省奄美野生生物保護センター職員や住民と共同で同種の駆除作業を行い、外来種の現状把握の必要性を訴えた。
 水田は大美川沿いの加世間又に立地する。宇都宮さんによると、龍郷町内では10年ほど前からボタンウキクサの侵入が確認され、水田の管理者などが自主的に駆除を実施してきていた。

 南アフリカ原産の同種は、日本の侵略的外来種ワースト100に指定。繁殖力が強く葉一枚からも増殖し、在来種や稲と競合するなどの問題を引き起こすという。

 宇都宮さんたちは、田植え作業を予定する水田に入り、土のう15個分のボタンウキクサを抜根して回収。水田に入らないように駆除したボタンウキクサは、陸上で枯死させて処分した。

 作業を終え宇都宮さんは、「まず現状把握があるべき。外来植物の全体的な状況を確認して、どう対応するかが大事」と提言した。

 環境省奄美自然保護官事務所の岩本千鶴自然保護官は宇都宮さんの取り組みについて、「本所の職員が地域で一緒に活動させていただき、とてもありがたい。外来種に関する情報を共有しフィードバックして連携を取れれば」と話した。

 外来植物の侵入拡大を防ぐために、「住民と行政等が一体となった取り組みが必要」と宇都宮さんは訴えている。世界自然遺産を目指す島として、誇れるような対応が求められるだろう。