再生産可能な補償を

タンカンでは11月から収穫期まで必要な夏秋梢=かしゅうしょう=の整理(せん定作業)。移動規制になっても管理作業は不可欠だ

要望活動「理解頂き好感触」
継続した管理作業不可欠

重要病害虫ミカンコミバエの奄美大島への再侵入を受けて生産者代表も関係国会議員や農林水産省に要請活動を行ったが、「地元の苦境に対し理解をいただき好感触が得られた」との受け止めがある一方、再生産可能な生産補償を求める声が強まっている。再生産の条件整備は継続した管理作業など生産者自身にも求められそうだ。

奄美群島市町村長会・同議会議長会による中央要望活動は今月19日にあったが、生産者を代表してJAあまみも参加した。奄美大島を管轄する大島事業本部からは岡山俊一果樹部会長、平井孝宜奄美市果樹部会長が加わった。

生産者代表は森山裕農水相だけでなく、地元選出の金子万寿夫衆院議員=鹿児島2区=、保岡興治衆院議員=同1区=、JA出身で農政に精通している野村哲郎参院議員=鹿児島選挙区=とも面談(意見交換)。ミカンコミバエ確認によって「今後の雇用創出やブランド崩壊、奄美群島全体の農業分野への不安が暗い影を落としている」として、▽近隣地域への拡大を未然に防ぎ確実な根絶▽根絶後も再生産を可能とする農業経営体および生産環境維持が必要―などを訴えた。

要請活動を振り返り岡山さんは「大臣を始め国会議員のみなさんはしっかりと地元の要望を受け止めてくれた。支援や防除に対し前向きな姿勢が感じられた」、平井さんは「これまで国の方針について直接聞くことができなかったが、大臣や議員のみなさんから『必要な予算に関しては国が全て面倒をみる。早期根絶を目指す』という力強い言葉をいただいた」。

国の姿勢に手応えを感じつつも引き続き再生産可能な生産補償を求めていくという。「防除の状況によって早期根絶が見えてくる。移動規制の解除が早まる可能性もあるだけに、農家は今後も適切な管理作業が欠かせない。そのためにも肥料や薬剤といった必要経費への支援を行政は念頭に置いてほしい。次につながる補償だ」「移動規制があるとして何もしなければ放任園と同じになってしまう。タンカン生産では黒点病やそうか病等対策のための定期的な薬剤防除は、ミバエ系病害虫の寄生を防ぐことにもなるだけに管理作業を継続しなければならない。放任は樹にとってもマイナスで、こうした取り組みへの支援を行政は考慮してもらいたい」(岡山さん平井さん)。

柑橘=かんきつ=類では、早生系統は既に収穫期に入っているが年内のポンカンに続き、年明けからはタンカンも収穫期を迎える。移動禁止はあくまでも島外で、島内移動には制限はかかっていない。しかし地元市場でみられるポンカンのように島内消費は需要が限られており、供給量のだぶつきで値崩れを起こす。岡山さんは「島で生産される農産物は本土に出荷しない限り農家の収益につながらない。柑橘類の中でも単価の高さからタンカンは利益を生み出す作目であり、成長産業。一刻も早く再び本土に出荷し島の経済の損失を取り戻したい」と語る。

収穫期では果実の適切な処理も必要だ。「熟した果実はミカンコミバエの寄主果実であり、落果したものをそのまま放置するのではなく、自主的に回収し廃棄処理しなければならない。こうした作業に支障がある高齢農家等に対しては、行政は回収作業を業者などに任せるのではなく、農家に担当させてほしい。防除作業のテックス板設置を含めて何か協力したい、役立ちたいと考えている農家は多い」と岡山さん、平井さんは話している。