地域資源のネットワーク対応を

160206地域包括ケアフォーラム三浦さん

講演した西元さん(写真上)と三浦さん(同下)

奄美市で地域包括ケアフォーラム
専門家2氏講演 備えに〝終活〟ススメ

 第1回地域包括ケアフォーラム~奄美市が目指す地域づくり~(同市主催)が6日、同市名瀬の奄美文化センターであった。2人の専門家を招いて開かれた講演のほか、地元関係者も交えたパネルディスカッションを開催。少子超高齢化社会の到来により、医療や介護など従来の公的サービスによる対応が限界を迎えつつあるなか、参加者は高齢者が住み慣れた地域で安心して暮らし続けられるよう、地域づくりや事前指示の有効活用など〝終活〟への理解を深めた。

 社会福祉法人青山里会常務理事の西元幸雄さんは、「福祉・介護の専門職と地域住民が協働する地域づくりの実践」と題して講演。西元さんは高齢者人口や要介護認定者の増加などにより、「日常生活支援の必要な人や孤立化している人の発見と対応が重要な課題。医療・介護・福祉など制度内のサービス対応に限界がある」と言及。

 一方、高齢者が住み慣れた地域で暮らし続けることの意味として、①過去の経験や知識を生かせる②違う環境では生活に慣れるために余計な費用がかかる③家族や隣人など緊密な人間関係の存在―を挙げ、「生活支援や福祉サービスがないところに、専門職の介護・医療・予防サービスを提供しても十分な力は発揮しない。地域・住民など地域資源のネットワーク対応が必要」と提言した。

 社会福祉法人に期待される役割として、地域における「間=はざま=」の福祉需要への積極的な対応、地域の多様な主体との連携強化などを列挙。高齢者世帯の孤立化を防止するため、食や居場所、相談を提供する拠点の立ち上げなど、自法人の取り組み事例を紹介した。

 東京慈恵会医科大学附属柏病院患者支援・地域連携センター副センター長の三浦靖彦さんは、「最期まで本人の意思を尊重できる地域づくり」をテーマに講演した。三浦さんは国内の平均寿命の伸びから「これからの自分の生き方(逝き方)を考えなければいけない」と持論を展開し、老い支度や終活の必要性を強調。

 終末期を自宅で過ごしたいと希望する人が多いものの、国内では1970年代後半から病院などで最期を迎える人の割合が逆転。現在は約9割が病院で亡くなっていることから、三浦さんは自分自身の受ける医療行為について、「自分の意識がはっきりしている間に自分が受けたい医療行為の希望を表明する『事前指示』を、主治医や家族にはっきりと伝え、周囲のかなえてあげたいという考えが一致することが大切」と話した。