車いす利用者のメッカに

車いす利用者が介添人なしで活動できる施設「ゼログラヴィティ清水ヴィラ」。施設内には専用プールも

ダイビングボートに搭載されている車いすエレベーター

今春オープンへ 世界初の専用施設
瀬戸内町清水

瀬戸内町の清水集落に今春、車いす専用の滞在型リゾートマリンスポーツ施設「ゼログラヴィティ清水ヴィラ」がオープンする。車いす利用者目線の宿泊施設や専用プール、ダイビングボートなどを備え、車いすの人が介添人なしでマリンスポーツなどを楽しめる。オーナーの鳥畑純一さん(65)は、「車いす利用者専用の施設としてはおそらく世界初。ここがマリンスポーツを楽しむ車いすの人たちのメッカになれば」と期待を寄せている。

鳥畑さんは両親が同町勝浦出身の奄美2世。初めてダイビングをした時に体験した「無重力(ゼログラヴィティ)の世界を車いすの人にも味わってほしい」(鳥畑さん)と、約25年前から構想していた。静閑さや海中の美しさ、潮流など、車いす利用者の施設を前提に総合的に検討を重ね、清水海岸を適地と判断して3年前から事業に着手した。

施設は全4部屋で、バリアフリーのトイレ・シャワーを設置。室内スイッチやコンセントの位置などにも車いす利用者が利用しやすい工夫が施されている。施設内には車いすのまま入ることのできるプールがあり、温水ヒーターやスロープを整備して、1年を通じてシュノーケリングやダイビングの練習ができる。

また関係者が「おそらく世界初」という、水中エレベーターを搭載した専用のダイビングボートも特注。利用者はステンレス製の車いすに乗ったまま、海の世界を楽しむことができる。このほか、施設ではシーカヤックなど7~8種類のアクティビティを用意し、利用者のニーズに応える予定という。

2020年には東京パラリンピックも開催されることから、今後はパラリンピックの選手や世界で活躍する車いすのスポーツ選手を招き、国内外へ情報を発信。関係機関と連携して、車いすの人たちの訪日旅行モデル事業を目指す方針で、6月には開業セレモニーも企画している。

奄美大島への観光客が増加する一方、観光関係者の間からは滞在時の体験メニューの少なさを指摘する声も上がる。鳥畑さんは「これからは過ごし方の提案の時代。奄美大島に車いすの人が利用できる施設があることを伝えることで来訪者が増加し、島の活性化につながれば」と話した。