初動対応「国で検証を」

市町村が主体となり地域ぐるみで進められている寄主植物の除去作業(資料写真)

県議会一般質問
放任園対策 誘引殺虫剤を重点設置も 加工原料確保「必要量は概ね調達」

3月定例県議会は1日、引き続き一般質問があり、田畑浩一郎議員=自民党、南九州市区=、伊藤浩樹議員=自民党、出水市区=、柳誠子議員=県民連合、鹿児島市・鹿児島郡区=、田之上耕三議員=自民党、霧島市・姶良郡区=の4議員が登壇。果実や果菜類の害虫・ミカンコミバエ問題が取り上げられ、緊急防除区域となっている奄美大島での初動対応について国での検証を求める答弁があった。また、防除対策で寄主植物の除去が進められているが、課題となっている放任園対策では地権者と連絡がとれない場合、園の周辺に誘引殺虫剤を重点的に設置するなど可能な限りの対策に努めているとした。

ミカンコミバエ問題は伊藤議員と柳議員が取り上げた。防除対策について伊藤祐一郎知事は「今後とも誘引殺虫剤の地上への配置や集落ぐるみで寄主植物(果実)の徹底除去、有人ヘリコプターによる誘引殺虫剤の散布枚数を増やすなどの防除対策に取り組み、まん延防止と早期根絶に取り組む」と決意を示した。

瀬戸内町で誘殺数が急増した中、初動対応や防除作業展開、住民への説明、加工品への影響などは福田博史農政部長が答弁。それによると、同町では加計呂麻島で昨年7月27日に最初に6匹誘殺が確認された。国、県、市町村で現地対策会議を開催し、国の植物防疫所の指導のもと国、県、市町村で誘殺が確認された地点を中心にトラップ増設による侵入警戒の強化を図るとともに「寄主植物の除去や誘引殺虫剤設置などの初動防除を行った」と説明。

しかし10月以降ミカンコミバエの誘殺数が増加し、ポンカン・タンカンの収穫時期も近づいていたことから、まん延防止を図るため国が専門家の意見を踏まえ緊急防除を決定。福田部長は「県としては特殊病害虫の防除手順に沿った対応だったと理解しているが、今回の事例を踏まえ国においてしっかりと検証していただきたいと考えている」と述べた。

このほか、①防除作業は県が市町村に委託しているが、作業員を雇用する外部委託も行われている②テックス板設置だけでなく、利用する予定のない寄主果実の除去が防除対策では重要。住民への現地説明会などを通しミカンコミバエの生態、寄主植物の種類や奄美農業への影響など周知を図っている。説明会に出席できなかった人にも市町村が必要に応じて集落の区長などと一緒に個別に説明を行っている③加工原料用タンカンの確保状況については大島支庁が加工業者に問い合わせたところ、原料確保に苦労したものの、必要量については概ね調達できたところが多いと聞いている―との報告があった。

寄主植物の除去は市町村が主体となり生産者、地域住民、県および関係機関が協力して取り組んでいるが、高齢者が多くて集落での除去作業が困難な地域では「作業員を雇用して対応するなど徹底して除去に努めている」との答弁もあった。放任園対策では集落の協力を得て市町村が地権者に連絡をとり、了解を得た上で寄主植物を除去している。

今年12月に運航開始する奄美ドクターヘリの効果については古薗宏明保健福祉部長が答弁。導入により▽奄美地域・十島村の救急医療体制の強化▽医療機能の分担・連携推進▽群島内で対応困難な患者は、より高度な医療が提供できる県本土の医療機関等への長距離搬送が可能―などを挙げた。

また、有視界飛行方式を採用している中で夜間運航は▽高圧線など障害物に対する飛行の安全性確保が困難▽離着陸場所の管理者の承諾や安全管理を図るための協力が得られにくい▽飛行中、特に離着陸時の騒音の問題―など課題が多いとして古薗部長は「ドクターヘリの夜間運航は全国的にも実施されていない」と述べた。

大島紬など伝統的工芸品の振興策で伊藤知事の答弁もあった。今年度は国の地方創生交付金を活用して販売促進やPRに取り組んでいるが、これにより「新たな商談の成立や、国際的な企業からのオリジナル製品受注につながるなど一定の成果が得られている」と報告する一方、知事は後継者不足をはじめ産地を取り巻く環境は厳しいとして「新年度は関係団体と連携し伝統的工芸品の国際見本市への出展に向けて検討するなど、業界と一体となって新たな市場開拓や新商品開発等の取り組みを進める」と述べた。