ウミガメ卵食害率 過去最大の24・8%

2012年~15年までの食害発生浜位置図=奄美海洋生物研究会提供=

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ウミガメ卵を捕食するリュウキュウイノシシ=提供写真=

奄美海洋研15年調査
住用町和瀬では初確認 大和村の石川~毛陣海岸、範囲拡大

 奄美海洋生物研究会(興克樹会長)は奄美大島における2015年のリュウキュウイノシシによるウミガメ卵の食害調査の結果をまとめた。食害が発生した浜は12浜で88巣だったが、産卵数が少なかったこともあり、食害率は過去最大の24・8%。奄美市住用町和瀬では初確認となったほか、大和村の石川海岸~毛陣海岸にかけては食害範囲の拡大がみられるという。

 15年のウミガメ類産卵回数は355回(アカウミガメ150回、アオウミガメ133回、種不明72回)で14年の715回の約半数。食害の産卵巣数は88巣(14年116巣)と減少したものの、食害率24・8%は過去最大となり、食害が恒常化している請島西岸などでは、地域産卵個体群の減少も懸念されている。

 地域別にみると、14年に食害が初確認された龍郷町白浜では15年も同様に食害が発生。奄美市名瀬のデン浜では、リュウキュウイノシシの足跡は確認したが、掘削痕跡や卵殻の産卵は見られなかった。奄美市住用町和瀬ナモノ浜では初めて食害を確認。12年から連続で発生している大和村石川海岸~毛陣海岸は食害範囲が拡大。同村ヒエン浜はウミガメの初産卵とともに食害が発生しており、同会では「リュウキュウイノシシがウミガメの産卵時期を把握していると思われる」としている。

 宇検村外浜、テイチ浜では13年に初確認後、14年は被害がなかったが15年は再びテイチ浜で食害が発生。瀬戸内町の加計呂麻島、与路島は産卵回数の減少にともない、食害はみられなかったものの、請島西岸に連なる浜のヤンマ、イキンマ、ケラジは4年連続でほぼすべての産卵巣が食害被害を受けたことから、アオウミガメの地域産卵個体群の減少が懸念されている。

 同調査には各市町村が協力したほか、大和村西部については環境省奄美野生生物保護センターと共同で実施。調査結果について同会では「イノシシにとってウミガメの卵を捕食するのは自然行動とも考えられる。一方で、近年頻発している豪雨や大型台風の高波などによる海岸の浸食で、産卵巣の卵が露出し、偶発的にイノシシが卵を発見する機会が多くなり、捕食行動が恒常化するようになったとも考えられる」と説明。「今後もウミガメ類上陸産卵調査と合わせて食害調査を行い、侵入経路などの解析を進めたい」としている。