4月中旬にも成虫へ

4月中旬にも成虫へ

 大和村で栽培が盛んなスモモ。島外出荷が可能になるか、3月中の防除対策が重要となっている

年末産卵、3月中の防除重要に
「スモモ特に警戒必要」

 果実、果菜類の害虫・ミカンコミバエの防除により、緊急防除区域の奄美大島(加計呂麻・請・与路島を含む)も誘殺ゼロが11週連続で続いているが、年末にグアバなど寄主植物の果実への産卵が確認された中、羽化し成虫となるのは4月中旬あたりとみられている。これを前にした3月中の防除対策が重要で、寄主果実の除去徹底など成虫の活動を抑え込む取り組みがあらためて求められそう。

 農林水産省植物防疫所によると、奄美大島の誘殺状況は、昨年12月15~21日の週に2匹(宇検村と瀬戸内町で1匹ずつ)が確認されて以降ゼロが続いている。しかし気温が高くなると、ミカンコミバエの活動が活発化するリスクが高くなることから油断できない状況にある。

 気温が低下する冬場でも産卵可能なメス成虫の活動が示されたのが、果実への幼虫の寄生。中に幼虫がいる寄生果実は、瀬戸内町では年末だけでなく年明け後も確認された。町農林水産課によると、寄生していたのはグアバ、シマミカン、キンカンの果実。山間部などで自生し野生化したものだけでなく、栽培園でも確認されたという。

 ミカンコミバエは産卵により幼虫(ウジ)発生後、蛹=さなぎ=は土中に生息し、土中からの羽化で新たな世代である成虫が誕生する。同省消費・安全局植物防疫課の島田和彦課長は「年末に産卵したものの羽化する時期は、4月中旬くらいとみられる。そのあたりに成虫が出現する可能性があるだけに、次世代の発生を防ぐには3月中の防除作業がとても重要。地域で不要な寄主果実が残らないよう取り組みを進めてほしい」と指摘する。

 対策として国や県、市町村の関係機関が取り組んでいるのが寄主植物の除去だが、放任園や庭木、空き家などに存在する寄主植物の取り残しが懸念されている。こうした箇所がホットスポット(ミカンコミバエが侵入し寄生する場所)となるおそれがあり、関係機関は地域住民の協力を得ながら活用しない果実の除去の徹底、土の中の蛹の羽化を防ぐためベイト剤の散布などの作業を進めている。

 ポンカン・タンカンの柑橘=かんきつ=類に続き、移動制限基準日を迎えたのが特産果樹のスモモ。5月に収穫期に入るが、その期間から遡り、基準日(2月22日)までの一世代相当期間にミカンコミバエが見つからない誘殺ゼロ(対象はオス成虫)が続けばメス成虫の活動もないと判断され、スモモは規制が掛からず島外出荷が可能になる。ただし、その期間に誘殺が確認されると、確認トラップを中心とした半径5㌔以内の区域が「特定移動制限区域」に設定され、その区域内で生産されたスモモは原則として全量廃棄の対象となる。

 スモモは特に大和村で栽培が盛ん。栽培面積約20㌶、生産農家約150人で、「果樹の村」を代表する作物だ。生産農家はミカンコミバエ被害を乗り越えての島外出荷を目指し収穫に向けた管理作業に取り組むと同時に、村果樹振興会(勝三千也会長)では昨年取得したK―GAP(かごしまの農林水産物認証)の更新準備を進めている。

 スモモはミカンコミバエが好む「好適寄主植物」だけに、「成虫が付きやすい」とされている。農水省は「スモモは特に警戒が必要。これから着果期に入り、果実が熟すようになると虫が寄生する可能性がある」としており、さらに防除対策の強化を呼びかけている。