伊仙町の松岡さん シリーズ「田園回帰④」に執筆

シリーズ「田園回帰④」に「子宝日本一の町より」の直体験の魅力を全国に発信(松岡由紀さん母娘)=伊仙町

「子宝日本一の町より」魅力発信
地方創生あり方も掘り下げる

 【徳之島】シリーズ『田園回帰④交響する都市と農山村―対流型社会が生まれる』(沼尾波子編著、農山漁村文化協会発行)が全国発売された。東京で生まれ育ち、徳之島で2人の娘を産み子育て中の伊仙町職員松岡由紀さん(同町犬田布)が、第5章「都市の子育て・島の子育て―『子宝日本一』の町より」で執筆。「子は宝」の価値観で子の自尊心も育んでいる地域環境、自然が育む生きる力など直体験に基づき魅力を発信。地方創生のあり方も含め鋭い視点で掘り下げている。

 人口減少と超高齢化社会、「成長」時代の終焉、未曾有の財政難…縮んでいく日本をどうするか。今後の時代に求められるのは、農山村を手放すことではなく、都市と農山村の関係を結びなおすこと―。人口減少時代の新たな「対流」の形の提示を進める「田園回帰」シリーズ。編著者の沼尾氏(日本大学経済学部教授)が伊仙町を視察して松岡さんの存在を知り、町当局を通じ執筆依頼していた。

 徳之島で生まれた2人の娘を連れて東京に帰省した際、9歳の長女も、都市の人間関係に違和感を訴える。それは「徳之島では当たり前の、人生の節目をみんなで祝い合う仕来り。上の子が下の子の面倒をみること。赤ちゃんでも一人の人間としてしっかりと声をかけてくれる地域の文化。〝ここに居ていい〟と、子を育てる親と子どもに計り知れない自尊心」の欠如だった。

 ほか執筆の眼目の一つに、「全てが金銭サービス化された東京での子育て状況に、大人の物差しで測られ、人為的に考え抜かれた環境の中で育つ子どもに本能的な『生きる力』は生まれて蓄えられるだろうか」とも提起。そして「生きていくための資源は金銭(収入)でばかりで測られてきたが、指標さえ変えれば、地方や離島といわれる『田舎の田舎』にこそ、豊かな天然資源と人的資源、そして生きることそのものが存在するのでは」と強調する。

 最近は「20世紀型経済至上主義の価値観を軽々と飛び越え、敢えて田舎に住みたいという若い子育て世代は増えている」。著書ではほか、単に「よそもの」の新しい思考に求めるだけではなく、地元での人材育成にも成功している島根県海士町などの実例にも触れている。

 松岡さんは1971年東京都新宿区生まれ。北海道大学農学部卒業後、国際自然環境保全分野での貢献を目指し米国エール大学環境スクールに進み、英国で3年間地域再生の業務に就いて帰国。徳之島には同関連国内企業の調査業務で2003年に初来島。現在、伊仙町企画課地方創生推進室主事。

 全国書店(今月20日発売)で本体価格2200円(税別)。