新たな共生関係確認

新たな共生関係として加計呂麻島沿岸浅海で確認されたスツボサンゴとヤドカリ=同センター提供=

スツボサンゴとヤドカリ
鹿大島嶼奄美分室 加計呂麻沿岸浅海で

 鹿児島大学国際島嶼教育研究センター奄美分室を拠点として展開している「南薩諸島の生物多様性研究プロジェクト」において、瀬戸内町加計呂麻島沿岸浅海から見つかったスツボサンゴとヤドカリの新たな共生関係が確認された。20日には国際誌『Marine Biodiversity』の電子版に観察報告が掲載されている。

 スツボサンゴはイシサンゴ目キサンゴ科に属し、一般的なイシサンゴとは異なり、岩盤に固着せず移動生活を送る種。生息する砂泥環境は個虫が流されたり、砂に埋もれたりと一般的なイシサンゴでは生存が難しい不安定な環境。同種は骨格に開けた孔にホシムシ類を住まわせ、引っ張ってもらうことで砂への埋没を防ぎ、砂泥底へ適応したと考えられており、また、同種もホシムシの成長に合わせて孔を拡大させるなど、複雑な共生関係が成り立っているという。

 今回新たな共生関係が確認されたのは、加計呂麻島南岸、伊子茂湾内の水深30㌢ほどで観察されたスツボサンゴ群集。スツボサンゴはホシムシ以外との共生は知られておらず、ヤドカリとの共生観察記録は今回が初めてという。

 同報告をした藤井琢磨特任教授は「今回見つかったツノヤドカリ属の未記載種(名前が付けられていない種)であり、今後は、外部研究者と共同で調査を進める予定。将来的には新種となる可能性が考えられる」と説明。スツボサンゴについては、世界的に広く知られている種でありながら「奄美で広く分布しているわけではなく、潜って観察できる水深での生息は珍しい。今後はヤドカリとの共生の割合やどのように生活しているのかなどを調査していく」と語った。

 今後は、スツボサンゴ以外にも砂泥底に適応したイシサンゴ複数種からなる特異な群集が形成されていることから、その生態および分類に関する学術調査を実施。奄美大島周辺の湾内には外洋に面した典型的なサンゴ礁とは異なる特異な生物多様性が存在する一方で、「内湾環境は埋め立てによる直接的な消失、護岸や陸水の流入による攪乱にさらされやすい脆弱な環境」とし、内湾環境の生物多様性の記録は急を要するとした。

 同プロジェクトは鹿児島大学の教員約50人が2015年度から取り組んでいる。