台風慈雨もたらす

9月に入り奄美地方に接近した二つの台風は慈雨となり、サトウキビ生育を回復させている(奄美市笠利町で)

喜界など北部干ばつ影響改善
サトウキビ生育 引き続きかん水重要に

奄美地方は梅雨明け以降少雨が続き、基幹作物・サトウキビの生長速度の低下が懸念された。特に南3島よりも喜界島、奄美大島の北部が深刻で干ばつによりキビの葉のロール現象など影響が見られたが、今月に入って奄美地方に接近した二つの台風が慈雨をもたらしキビの生育は回復しつつある。

県大島支庁農政普及課が、サトウキビのかん水対策を呼び掛けたのが6月21日。奄美地方の梅雨明け後の夏季の気候は例年、高温、多日照、無降水が基調なため、キビの茎伸長速度は低下する。ただし、「かん水を実施することで茎伸長速度は維持され、茎伸長の低下を抑えることができる」として関係機関を通し、キビ生産農家へかん水対策実施の周知を図った。

7月、8月も少雨が続き、キビ生育に特に影響が出ていたのが喜界島と奄美大島北部。喜界島は農業用水を供給する地下ダムが整備されているが、スプリンクラーなどかん水施設が未整備の地区(荒木集落や手久津久集落など)で深刻化。サトウキビの葉のロール現象、下枯れ、葉色の悪化、茎伸長速度の遅れといった干ばつによる影響が出ていた。

同島のキビ収穫面積は約1390㌶。このうち約300㌶と全体の5分の1を未整備地区が占め、このまま干ばつが続けば収穫量の低下が避けられない状態だった。喜界町は8月4日に渇水対策本部を設置。かん水施設未整備の地域には散水用のトラックを貸し出すなど対応。しかしゴマなど他作物の収穫期と重なり、かん水が不十分な状態が続いた。

こうした状況を改善したのが9月に入り接近した台風。気象庁によると、喜界では今月3日に12・5㍉、5日38・0㍉、6日56・0㍉のまとまった雨を観測。「台風が恵みの雨をもたらし干ばつ被害は解消しつつある。台風の強風による被害は一部での倒伏程度で折損は出ていないと報告を受けている」(支庁農政普及課)。町も今月6日には渇水対策本部を解散した。

奄美市笠利町でも喜界ほど深刻ではなかったものの、干ばつによる影響が見られた。笠利では今月5日59・0㍉、6日31・5㍉の雨量を観測。台風がもたらしたもので、こちらも慈雨となっている。農業用水では、笠利には須野ダムが整備されているが、夏場の少雨によりダムの貯水量も6割程度まで低下していたという。

奄美北部の干ばつによるキビ生育への影響は改善しているが、大島支庁は引き続きかん水の重要性をアピールしている。「土壌の水分状態を確認した上で、1週間~10日ほどの間隔でのかん水を習慣化してほしい。水を与えることで茎の伸びにつながる。受益地域でスプリンクラーなどの施設があるところは十分な活用を」(農政普及課)。

また、合わせて同課は夏植えの植え付けを「9月前半までには終了」も呼び掛けている。9月植えの方が、10月植えよりも全品種で収量が高いためで、推進を図っている。