2年ぶりタンカン注文受付開始

ミカンコミバエの侵入による移動規制が解除され、平井果樹園では2年ぶりにタンカンの注文受付を開始した

平井果樹園 全国の顧客に案内書発送
生育良好、今後の気温低下期待
ミカンコミバエ誘殺急増 表面化から1年

奄美市名瀬の平井果樹園(平井孝宜園主)は1日、タンカンの注文受付を開始した。果樹・果菜類の害虫ミカンコミバエの侵入で緊急防除が行われ、島外出荷できなかった関係で昨年は注文に対応できず2年ぶり。今年は1週間前に全国の顧客に案内書を発送し備えたところ早くも注文が届いているが、〝1年の空白〟の影響が出ないか不安を抱えながら対応している。

名瀬地区の山間部、本茶団地にある平井果樹園。全体面積は約4㌶ある。生産されているタンカンはJAへの出荷だけでなく、島外からの注文者に直接発送。北海道から地元まで700~800人の顧客と取引しており、関東方面が最も多く「30年以上も取引が続く顧客もおり、ほとんどが繰り返し注文をいただくリピーター」と孝宜さん。

顧客管理は妻のかおりさんが担当。注文受付を前に、案内のダイレクトメール(DM)を発送したが、今年は「出荷制限解除のお知らせとお礼」と題する文書を添えた。この中では出荷制限が解かれ(昨年12月13日から始まった島外移動規制の緊急防除解除は今年7月14日)、来年2月のタンカン出荷が可能となったことを伝えている。

事前に発送した注文用紙に希望する商品を記入してもらい、FAXを主体にして顧客からの注文に対応。かおりさんは「お歳暮のお返しとしてミカン類が少ない2月にタンカンを送るという方が多い。当初の予定(来年3月まで)より早く解除になり、『良かったね』という声が大きな喜びとなった」と語る。孝宜さんは「今年、タンカンを届けることができなかっただけに、これまで通りの注文が届くかという不安もある。購入して自ら味わう方は食べることができなかったため、タンカンの味を忘れてしまったということにつながっていないだろうか」と話す。当初警戒された〝2年の空白〟は回避されたものの、1年出荷できなかった影響が気になるところ。

新聞やテレビの報道などにより地元や県内では出荷制限の解除が浸透しているが、全国的には奄美大島の移動規制解除が十分に伝わっていないという。孝宜さんは「農家個々では取引範囲でしか伝えることができない。行政の協力をお願いしたい。タンカン収穫期のイベントのほか、出先機関などを通して全国にPRする取り組みができないだろうか」と提案する。収穫後の販売に向けて、JAや地元市場の取り扱いを含めて産地一丸となって全国に情報を発信する取り組みが求められそうだ。

今期のタンカンの生育は、台風被害がなかった関係で着果状態は例年になく良好。生産量の増加が期待でき、品質の方は糖度の伸びや食味の良さを確保するためにも今後迎える冬場の例年通りの気温の低下が望まれている。暖冬になると大玉傾向になるほか、着色もタンカン本来の紅の乗りに支障が出るため。品質面はこれからの気象条件が左右することになる。

奄美大島では昨年6月末に奄美市でミカンコミバエ1匹が誘殺され、9月下旬から瀬戸内町の加計呂麻島などで急増。1年前の11月に入ってから誘殺急増が表面化し、同月4日に農林水産省が防除対策検討会議を開催。植物防疫法に基づく緊急防除として、奄美大島全域(加計呂麻・請・与路島を含む)を対象に、果実・果菜類の島外出荷を禁止する移動規制の実施を決定。12月に緊急防除の省令が施行され、これによりポンカンやタンカンなど計約1800㌧が廃棄処分となった。廃棄に伴う県の買い上げ補償額は約5億6千万円に膨れ上がった。

奄美大島での誘殺は昨年12月22~28日の週以降、今年10月10日現在もゼロとなっている。
(徳島一蔵)