世界自然遺産 大きく前進した年

2018年の世界自然遺産登録を目指す奄美で最も大きなタンギョの滝=奄美市住用町=

登録へ正念場「素晴らしいもの認識を」

 奄美群島が待ち望んでいる世界自然遺産登録が大きく前進した2016年。国立公園が来春、正式に指定されることになり、いよいよ世界自然遺産登録が現実的になってきた。今後のスケジュールでは17年は推薦書の提出(2月1日まで)を皮切りに、夏頃に世界遺産委員会諮問機関(IUCN)による現地調査を予定している。最短で18年夏の世界自然遺産登録を目指す上で、さらに17年は大事な一年となる。

 環境省では世界自然遺産の保全・管理上の課題として▽希少動植物の保護(保護増殖、法や条例による規制、監視・巡視強化、交通事故対策、普及啓発の促進)▽外来種対策(マングース、ノヤギ、イヌ・ネコの適正飼育など、外来種の駆除、監視)▽産業活動などとの調和(環境に配慮した公共工事、生物多様性に配慮した森林施業など)▽良質かつ持続可能な利用・体験の提供(観光客対応、エコツーリズム推進、観光施設整備)▽地域社会の参加・協働による保全管理(情報発信、住民の保護活動促進、環境学習の推進など)―などを挙げている。国立公園指定に伴い、推薦書に添付する環境保全と観光利用に関わる管理計画や行動計画もほぼ決まったが、実際に行動に移すのはこれからというものも多い。

 現在、奄美エコツアーガイド連絡協議会では、希少種の保護や、ガイドの質向上などを目的に、奄美群島エコツアーガイド認定制度の仕組み作りを行っている。しかし、今年の夏頃、ナイトツアーが盛んな時期には、「見知らぬガイドがいる」「山の中でレンタカーを見かけた」という声があった。

 環境省や地元保護団体でも、日頃からアマミノクロウサギのロードキル防止に向けて啓発活動に取り組んでいるが、クロウサギには注意しても、その他の路上に出てくるカエルやヘビなどを気にかけない車は多い。その結果、クロウサギ以外の希少種がロードキル被害に遭う姿が見られる。また、盗掘・盗採も後を絶たないという。

 同協議会・喜島浩介会長は、山中の立ち入り制限をかけていくことも大事なことの一つとしつつ、「盗掘・盗採には住民の監視の目が一番効果ある。そのためにも島の人が、昔の人が残してきた奄美の自然は、世界自然遺産になるほど素晴らしいものなんだという認識を持つことが一番。奄美の自然を一番知っているのは、地元の住民。改めて、家族で奄美の自然について話してほしい。おじいちゃん、おばあちゃんがどんなふうに自然と付き合ってきて、今の奄美につながっているのかが分かるのでは」と話した。
(油井あづさ)