ワイルドライフセミナー

浜田太氏がアマミノクロウサギの生態を解説した

浜田太氏 アマミノクロウサギ特別講演
クロウサギとの共生必要 国立公園指定決定記念イベント

奄美群島国立公園指定決定記念イベント・2016年度あまみワイルドライフセミナー『アマミノクロウサギ特別講演会in大和村』(環境省奄美野生生物保護センターなど主催)が25日、村防災センターであった。講演では写真家でアマミノクロウサギ生態研究家の浜田太氏が、貴重な映像を交えてアマミノクロウサギの子育てなどの生態を詳しく解説。奄美群島が、世界自然遺産登録を目指すためにクロウサギとの共生が必要との見解を示した。

同セミナーでは、調査研究成果の地域への還元、住民の自然への理解促進や自然環境保全の普及啓発を図ることが目的。会場の防災センターには、講演会への関心の高さから160人を超す聴衆が集まった。
講演は「アマミノクロウサギの生態 フィールドからの報告」と題して、浜田氏の30年以上にわたる生態観察と研究から、アマミノクロウサギの子育てや、求愛行動や縄張り意識によるけんかの様子など貴重な映像記録で、アマミノクロウサギの生態について解説。それによると、600万年前にアマミノクロウサギは地球上に出現し、150万年前には陸続きの大陸から奄美大島や徳之島に移り住み、100万年前の海面上昇で、奄美大島湯湾岳と徳之島井ノ川岳の頂上近辺に取り残されたと推定。そして奄美大島と徳之島の固有種となり、文献では、藩政末期の1850年の名越佐源太による『南島雑話』の中で、「大島兎」として記録されていることを紹介した。

また浜田氏は30年以上の観察で、10例の子育てを観察してきたが、1例だけ2体の子育てを観察したことも報告。これまでの調査からマングースが減ってきていることを実感するものの、今後は「ノネコの問題がアマミノクロウサギに影響するのではないか」と懸念も示した。

奄美の世界自然遺産登録について、浜田氏は「奄美固有の自然は、地球規模のアイデンティティーになる」と評価。「貴重な自然を保護して未来に引き継いで行くために、世界から英知を結集し、世界に誇れる奄美モデルとし、恒久的な環境保護対策と活用方法の構築が必要」と語った。

続いて中山昭二中央公民館長が、大和村立大和小中学校に在籍時アマミノクロウサギの飼育活動に従事した経験を報告。大和小中学校では、1961年(昭和38年)から1991年(平成3年)の30年間文化庁の許可を受けて、アマミノクロウサギが飼育されていて、中学生がエサを与え飼育小屋の清掃やアマミノクロウサギの生態を観察していたことを、当時の報道記事のスライドで発表した。

主催者の野生生物保護センターからは、アクティブレンジャーの木元侑菜さんが大和村内のアマミノクロウサギの最新情報の報告がなされた。報告では、今まで生息してないと考えられていた県道周辺でも、交通事故が発生しており大和村内でアマミノクロウサギの生息域が拡大してきていることを受けて、夜間の運転に注意することと事故に遭ったアマミノクロウサギを目撃したら野生生物保護センターに連絡することを訴えた。なお同センターの連絡先は24時間対応となっている。
奄美野生生物保護センター(℡0997―55―8620)