ミカンコミバエ 沖永良部で初の誘殺確

ミカンコミバエの沖永良部島での誘殺確認を受けて増設されるトラップ(資料写真)

「飛び込み」可能性 トラップ増設、初動防除も
農家、情報の共有化注文

果樹・果菜類の害虫ミカンコミバエの誘殺が沖永良部島で確認された。同島での確認は奄美群島での根絶(1979年)以降、初めて。トラップ(捕集器)による今回の誘殺は、同島での発生ではなく台風や季節風など風に起因する発生国(台湾やフィリピンなど)からの飛来による「飛び込み」の可能性がある。国や県などの関係機関は対応マニュアルに基づき予防のための調査のほか、初動防除に乗り出す。

県大島支庁が23日、沖永良部島でのミカンコミバエの誘殺確認を発表した。県が県内各地で月2回実施しているミバエ類の侵入警戒調査で、ミカンコミバエ雄2匹の誘殺を確認したという。確認日は6月21日(知名町徳時集落)と同22日(同町知名集落)。

これを踏まえて国の機関である門司植物防疫所名瀬支所と県などは22日に、知名町で現地対策会議を開催し、対応マニュアルに基づく対応方針を確認した。▽トラップ増設による調査=22日に、誘殺地点周辺(半径5㌔㍍以内)のトラップを50基(既設19+31)に増設し、詳細な発生状況確認▽寄主植物の調査=6月23日と7月5日に周辺(半径2㌔㍍以内)の寄主植物(グアバ、パパイアなど)を採取、それぞれ5日間保管後切開し、幼虫の有無を確認―のほか、初動防除も。今月26日に誘殺地点周辺(半径1㌔㍍以内)に誘殺板(テックス板)を約2千枚設置するという。

農林水産省消費・安全局植物防疫課の島田和彦課長は「今回の誘殺は現地での発生を示すものではなく、飛び込みの可能性がある。防除のためのマニュアルに基づいてトラップ増設、テックス板設置、果実調査といった予防のための取り組みが進められており、来週の鹿児島県による調査で定着による発生かどうかも明らかになるのではないか。適切な防除対策により発生を食い止めなければならない」と説明する。

沖縄県でも誘殺が確認(2017年度に入ってからは宮古郡多良間村で6月19日までに合計21匹)されている。発生国からの侵入リスクは奄美・沖縄の南西諸島は「常にある」ことから、関係機関は風評被害につながらないよう「飛来と発生の違いを十分に認識し、冷静に受け止めてほしい」と呼び掛けている。大島支庁農政普及課の宝正己課長は「対応マニュアルに基づいた対策が粛々と進められており、農家のみなさんは安心してほしい」と話す。

防除では誘引剤および殺虫剤を染み込ませたテックス板の散布が行われる。今回のような誘殺に対応するため備蓄が欠かせないが、初動を万全にしていくためにも財源(テックス板備蓄の安定化)に目を向けたい。奄美大島の状況が示したように、ミカンコミバエ発生による移動規制は地元の産業経済に多大な影響を及ぼすだけに恒久的な財源の確保に向けた議論が必要だ。

移動規制で島外に農作物(規制対象品目)が出荷できない緊急防除が昨年7月14日解除された奄美大島。同島でのミカンコミバエの誘殺は2015年12月21日以降、確認されていない。それでも今回、沖永良部島での誘殺確認を受けて奄美大島の果樹農家は警戒を強めている。

JAあまみ大島事業本部奄美市果樹部会会長の平井孝宜さんは「二度目のミカンコミバエ発生により緊急防除が15年12月から昨年7月まで行われたが、このときも誘殺の初確認は2年前の6月だった。誘殺を受けて発生を食い止めるには初動対応こそ重要。関係機関により初動防除が行われるとのことだが、ぜひ生産者も加えてほしい。防除に協力していきたい」と語ると同時に、平井さんは情報共有の大事さを挙げる。「確かに風評被害には注意しなければならないが、正しい情報を周知することで風評被害は防げる。今回のような誘殺確認を含めて常に情報をオープンにし、住民との共有を図ってほしい。それによって防除対策への関心が高まり、住民も協力する」。

なお、国が打ち出した緊急防除解除後の防除方針では、「国、県、市町村は平時から緊密に連携、誘殺にかかわる情報等速やかに地元住民に提供」も掲げている。ミカンコミバエ種群の誘殺状況は植物防疫所のホームページで確認できるが、住民への迅速な情報開示が迅速な対策につながっていく。
 (徳島一蔵)