奄美発の西郷どん講座

奄美での西郷について講話を行った奄美西郷塾の安田塾長

「島の良さ逆に教えられる」 分け隔てなく接する「人間性が奄美の良さ」

あまみならでは学舎 安田氏が講師

県立奄美図書館(石塚一哉館長)は4日、奄美市名瀬の同館研修室で生涯学習講座「あまみならでは学舎」の7時間目を開いた。一般など77人が参加し、講師から西郷隆盛が奄美で受けた影響や、息子・菊次郎が生涯で実践した敬天愛人の道などの講話が行われた。

講師を、奄美西郷塾塾長でNPO法人グレース・ェ・サモサ理事の安田荘一郎氏が担当。安田さんは2002年に西郷隆盛の「敬天愛人」思想を広める目的で同NPO法人を設立し、16年から市の公民館講座「奄美西郷塾」の塾長を務めている。

安田さんは、10年から14年までカナダで生活。「カナダという移民社会の中での暮らしで、日本や故郷の奄美大島の良さに気付かされた」「日本の良さが凝縮されたのが奄美ではないだろうか」と語った。

奄美で西郷塾を始めたのは11年前に、熊本県菊池市が龍郷町を訪問したことがきっかけと発表。その翌年には京セラ名誉会長の稲盛和夫氏の記念講演会が龍郷町のりゅうゆう館で開かれ、安田さんも講演を聞いて稲盛氏が「西郷南洲という偉大な存在を育んだ、その末裔ともいうべき、この会場にお集まりの民様」という発言をしたことに深い感銘を覚えたという。

安政の大獄で入水自殺に失敗して菊池源吾と名を変え奄美大島龍郷に身を隠すことになった西郷の心境について、「肥後藩の長岡監物への手紙で、土中の死骨と書いていた」と解説。安田さんは、「奄美での暮らしで愛加那と結婚し、菊次郎などが生まれて家族を得ると人間性に大きな変化があった」「その後の徳之島、沖永良部島への遠島の厳しい経験で、敬天愛人思想に至ったのでは」と推察する。

奄美での西郷の事績を調べて発信することで、「西郷から奄美の宝ともいえる島の良さを逆に教えられている」。安田さんは、「奄美の良さは、人の出自にとらわれず分け隔てなく接する人間性の良さや、書物を重要視する学問への意識の高さなどでないか」と語った。

西郷隆盛と庶長子=庶長子=の菊次郎の生き様から、「奄美を敬天愛人の母体『愛の島』奄美として、PRしては」と提案。次回の「あまみならでは学舎」は、18年1月に鹿児島大学学術研究院の高宮広土教授の先史学分野の講座を予定している。