アサギマダラ再捕獲 長野から1180㌔の旅

アサギマダラを再捕獲した龍郷小の岩崎想くん(右)と、宇都宮さん


長野県松本市美ヶ原林道から移動して龍郷町長雲峠で再捕獲されたアサギマダラ

秋の渡り「個体数少なく移動ばらつき」

アサギマダラへのマーキング活動で環境大臣賞を受賞した龍郷町の龍郷小学校(橋口俊崇校長、24人)児童が1日、学校近くの長雲峠への林道で約1200㌔離れた長野県から渡ってきたアサギマダラを再捕獲した。再捕獲されたアサギマダラは写真や記録など取り、長雲峠で捕獲したものとして翅=はね=に追記して放された。同校は7日に学校行事でアサギマダラのマーキング活動を計画しており、次の再捕獲に期待を寄せている。

アサギマダラは渡りをするチョウで、春には南西諸島から本州へと北上し、夏にはその子孫が涼しい高地に滞在、秋には南西諸島を目指し南下する。同校では2008年に、石川県の宝達山から飛来したマーキングのあるアサギマダラを再捕獲したことから、宝達小とマーキング活動の情報交換など交流が続いている。

再捕獲されたアサギマダラには「UTU 8.9 JET 841」と標識され、長野県在住の増澤敏弘さんが龍郷町から1180㌔離れた長野県松本市美ヶ原=うつくしがはら=林道の標高1600㍍地点でマーキングした個体と判明。美ヶ原から奄美大島への移動例は14年に1例あって、奄美大島の人がブログに掲載した写真でマーキングしたアサギマダラを確認したという。

増澤さんは、「夏に1200頭ほどマーキングした。2度の台風の影響か翅がかなり劣化している。奄美大島でもアサギマダラの移動調査が進んで、奄美大島での再捕獲の発見例が増えて欲しい」。捕獲した2年生の岩崎想くんは、アサギマダラが山に来ているとの情報で放課後に担任や母親、下級生などと長雲峠への林道に行きアサギマダラをマーキングした。

岩崎くんは捕まえた8頭目のアサギマダラを網から出す時に、マーキングされたチョウと分かり橋口校長に持って行き再捕獲の個体と確認してもらったという。この個体を含めて、捕まえたアサギマダラには「TATSUGO 11/1」と記入して山中に放した。

この日は7日のマーキング活動に向けて校区内に住む宇都宮英之さんが、1~4年生に事前学習でアサギマダラの話を行っていた。岩崎くんは、「アサギマダラが渡りをするのは知っていた。遠い長野県から来たのはすごいと思う。たくさん捕獲できてうれしかった」「今度のマーキング活動では、みんなにやり方を教えたい。アサギマダラが来る龍郷小学校に入学できて良かった」と話した。

長年アサギマダラの移動調査に取り組んでいる医師で群馬パース大学学長の栗田昌裕さんは、毎年約1万頭のアサギマダラにマーキング。南西諸島への南下では喜界島などを訪れ、再捕獲により移動ルートの解明に取り組んでいる。

栗田さんは今年の秋の渡りについて、「日本各地で夏の多雨などにより、個体数が少なく移動もばらつきが多かった」と指摘。栗田さんの東北・福島県での今夏のマーキング数は、5080頭にとどまり例年を大幅に下回った。

5日まで喜界島に入り、アサギマダラの秋の渡りを調査した栗田さん。自身が夏に福島でマーキングした個体は再捕獲されなかったとし、「夏に少なかったためか、南下する個体も少ない。移動も遅れているのではないか」と振り返った。

栗田さんは10年以上にわたり移動調査をしているが、喜界島でアサギマダラが例年より低い場所にいて捕虫網を使用せず手で捕獲できた個体もいたと異常を察知。「理由は分からないが、アサギマダラが弱っているとの印象を受けた」と話した。