島旅作家の河田さん講演

和泊中学校で講演した河田真智子さん

「存在することが生きる喜び」
障がい持つ娘、撮り続ける 和泊中で

 【沖永良部】島旅作家・写真家の河田真智子さん(東京在住・64)による講演会が13日、和泊町立和泊中学校(村山英哲校長)であった。重度の脳障がいを持つ娘、夏帆さん(30)との生活を写真で紹介した河田さんは「障がいがあっても、誰かのために存在することが生きる喜びになる。迷った時、つらい時は、近くの人に相談してほしい」と呼び掛けた。

 島の子ども達に人権について考えてもらおうと企画。生徒らは講演の数日前から、河田さんの著書と写真集を題材にした授業を受け、準備してきた。

 講演は午前と午後の2回、全校生徒151人が参加した。河田さんは、夏帆さんの成人式やリハビリ中の様子、手術の跡、家族との海外旅行など、これまで撮り続けてきた写真を見せ、その時の思い出を一つずつ生徒に伝えた。

 夏帆さんと祖父の2ショット写真では「祖父は、孫に障がいがあることを受け止められず、なかなか抱っこできなかった。夏帆が16歳くらいになり、祖父も歳を取り、初めて夏帆の手を握ってくれた」。

 手術後、集中治療室から帰ってきた夏帆さんの写真では「目をパッチリ開けて『私、元気だよ』という顔をしてくれる。喜びもあり、つらさもありながら育ててきた」。

 5歳の夏帆さんと訪れた加計呂麻島の写真では「島の人に『肩肘張らずに助けてもらっていいんだよ。島には人脈という足がある』と言われた。都会に住んでいるけど、島で子どもを育てるように自分の子を育てたいと思うようになった」と述べた。

 最後に河田さんは「つらかったのが、自分だけが障がい児の親で、他は健常児の親だったこと。周りに説明しても理解してもらえなかった。人は、自分が孤立している状態が一番つらい」と語った。

 同中2年の芋高明里さん(14)は「生きることの大切さを教えてもらった。桜と写る夏帆さんの顔を見て、言葉では表現できない感情が込み上げてきた」。同3年の大栄美天さん(14)は「これまで、障がいを持つ人の生活を知らなかった。自分がつらい時、河田さんの話を思い出せば『私は一人ではない』と感じられるだろう」と話した。