「中甫洞穴」(知名町)県指定文化財に

「中甫洞穴」(知名町)県指定文化財に

県指定文化財として指定するよう答申された知名町の「中甫洞穴」=県教委提供=

「中甫洞穴」で見つかっている「爪形文土器」=知名町教育委員会提供=

奄美考古学研究で極めて重要 爪形文土器発見

 県文化財保護審議会(会長・原口泉志學館大学教授)は20日、知名町の「中甫=なかふ=洞穴」など8件を文化財に指定するよう県教育委員会に答申した。同町指定文化財(1983年)で所有者は個人。現在までに登録されている県指定文化財は292件(2017年9月15日現在)で、合計数は300件になる。

 県教委文化財課によると、「中甫洞穴」は史跡で、沖永良部島の大山を囲み分布するドリーネ(石灰岩地域に存在するすり鉢状の凹地)の一つの、標高約100㍍の久志検水窪に所在。地下の鍾乳洞に通じる洞穴が2カ所に開口しており、開口部分と窪地内に遺跡が形成され、奄美群島最古の土器「爪形文土器」が発見された。

 河口貞德氏を中心に昭和50年代後半に3度の発掘調査を実施。奄美群島では、縄文~弥生・古墳時代の遺跡は海岸近くに位置するものが大半を占めるなか、中甫洞穴は内陸部に位置するという立地の在り方、生活の場、墓域としての利用方法、出土した土器資料の類例の少なさなどが注目されたという。

 調査・研究の進展で、南島爪形文土器は縄文時代早期後半から、前期前半ものと考えられ、轟式土器とされたものは、縄文時代中期前半の南九州に存在する尖底土器との関連が指摘されているが、「爪形文土器は依然として奄美群島における最古級の土器型式であり、それが同遺跡で初めて発見されたことなど、奄美群島の考古学研究において極めて重要。洞穴を利用した人々の当時の生活の在り方を示す貴重な遺跡」としている。

 このほか、「旧東郷医院」(有形文化財・建造物)=志布志市志布志町=、「久保観音堂の木造菩薩」(有形文化財・彫刻)=指宿市西方=、「里八幡神社の大般若波羅蜜多経」(有形文化財・書跡/典籍)=薩摩川内市里町=、「町田掘遺跡出土品」(有形文化財・考古資料)=霧島市国分=、「本城花尾神社春祭り」(無形民俗文化財)=鹿児島市本城町=、「根占原台場跡」(史跡)=肝属郡南大隅町根占=、「南九州市川辺町中山田のオキチモズク」(天然記念物・植物)が答申された。