クロウサギも加え鳥獣被害調査

クロウサギも加え鳥獣被害調査

大和村福元盆地で表面化したアマミノクロウサギによる果樹食害

クロウサギも加え鳥獣被害調査
県大島支庁 市町村に依頼 実態踏まえ防止策検討へ

 県大島支庁は、奄美群島内の市町村に依頼し有害鳥獣被害調査を行っている。毎年1回しているもので、今回は大和村の福元盆地で表面化したアマミノクロウサギによるタンカン食害を受けて、クロウサギも調査対象に加わった。実態を踏まえて共存を可能とする有効な防止策を検討していく。

 同庁農政普及課によると、被害調査は鳥獣・品目ごとに面積など被害状況を記録するもの。対象とする鳥獣はイノシシ、カラス、ヒヨドリなどのほか、地域限定では喜界島のシカ、沖永良部島のキジがある。本土では野ウサギによる農作物等の被害があることからウサギも対象項目に含まれており、これまで被害報告がなかったクロウサギも調査対象となった。

 福元盆地での食害報告(果樹の表皮や葉部を食い荒らす)を受けて、同課は現地を訪れ果樹園の被害状況を確認している。「確認したのは福元地区のみだが、徳之島でもサトウキビの新芽や果樹の樹皮等の食害報告がある。今回の調査によりクロウサギによる被害実態を明らかにしたい」。

 3月から行われている調査は、5月にはまとまる予定。大島支庁農林水産部の東洋行部長は「被害調査報告に基づきクロウサギ食害に関する情報交換会を開く。環境省を含む関係行政機関のほか、生産者代表、研究機関も加えて効果的な防止策を検討していきたい。防止方策の実証にも乗り出し、有効性を確認することも必要。対策では被害の防止と同時に、小動物を守ることも前提にしていきたい」と語る。

 世界自然遺産登録を目指している中、アマミノクロウサギは希少種のシンボル的な存在。生息環境を守る保護策の重要性の一方で、食害を抑制し産業の生産振興も図らなければならない。農政普及課では、希少種との共存も可能とする食害防止方策を見いだし、生産者支援を進めていく方針だ。