奄美漁協笠利地区の挑戦

超低酸素水につけ鮮度保持した魚。専用の雨靴を履き衛生管理を徹底しながら出荷作業する漁業者や漁協職員

取引先評価さらに向上 漁業者の収入安定が利点
魚出荷時の衛生管理徹底

 奄美漁業協同組合(柊田謙夫組合長、本所・奄美市笠利町外金久)笠利地区では、約20年前から魚の鮮度保持向上の取り組みを続けており、取引先は沖縄の大手スーパー、東京の「羽田市場」、神戸や広島の日本食専門店、名瀬のスーパーと広がり、評価が高まっているという。笠利地区組合員は昨年12月末現在で386人。今年から魚出荷時の荷さばき場の衛生管理を徹底する新たな取り組みを始め、さらなる評価向上に挑戦。特許庁に「奄美鮮魚 笠利産」商標登録を出願中で、奄美鮮魚のブランド化確立を目指している。

 奄美漁協の原永竜博参事(56)によると、衛生管理徹底の取り組みは、昨年10月に名瀬で開かれた「産地関係者を対象とした品質・衛生管理講習会」に参加したのがきっかけ。講師を務めた一般社団法人・海洋水産システム協会研究開発部の岡野利之氏が①優良衛生品質管理魚類市場の事例紹介②生産段階から流通段階における衛生管理と鮮度保持の取り組み―をテーマに講演した。

 岡野氏が奄美漁協本所を訪れ、衛生管理徹底に関するアドバイスをした。

 荷さばき場の周囲に通路部分を作り、中央部を魚類の出荷作業するスペースとし、出入りする4カ所に殺菌用の消毒液を入れた箱を配置。出荷作業する漁協職員や漁業者は専用の雨靴を履き、その雨靴を消毒液に浸してから出入りすることを徹底した。来客用の雨靴も準備。魚の荷さばき箱や魚を入れたクーラーがじかに地面に触れないように台を設置した。また、荷さばき場の周囲に野鳥の侵入を防ぐ防鳥ネットを張り衛生管理徹底を図った。

 約20年前、組合員の一部が参加し、鮮度保持を目的として船上で魚を活け締めし、血抜きする沖締め作業を行った。今は出荷する組合員全てが沖締め作業しているという。沖締めした魚は、水氷が入った大きなクーラーに入れ、その日の夕方からは木箱に移し、その上に氷をかぶせておく。操業日数は長くて3~4日。

 16年度から導入した「ウルトラファインバブル(UFB)」で作る超低酸素水の装置を活用してさらなる鮮度保持を図った。微細な気泡が魚体、内臓までコーティングして魚の酸化と菌の発生を抑制する。

 14年度から沖縄の大手スーパー㈱サンエーと市場を介さない相対取引を開始。サンエーは小売店舗66店舗(17年2月末現在)や外食レストラン、ホテルペンションを経営。鹿児島県漁連を通じてサンエーとの取引が始まった。魚種やサイズで価格を決める相対取引している。魚種はホタ(ウンギャルマツ、和名・アオダイ)、イナゴ(和名・ヒメダイ)、アカマツ(同ハマダイ)、チダイ(同ホシレンコ)、レンコダイ(同キビレアカレンコ)を主に約20種類。

 昨夏は多いときには1週間で3~4㌧、1カ月で10㌧出荷。取引額は14年度2470万円、15年度3670万円、16年度4070万円と増えた。17年度は未集計。

 16年7月から「羽田市場」への空輸出荷を開始。運営するCSN地方創生ネットワーク㈱のホームページによると、全国から空輸された魚介類を羽田空港内にある「羽田鮮魚センター」で仕分けし、全国の店などに配送している。

 笠利地区の小型漁船が釣ったいろんな魚種を空輸。普段は20㌔~100㌔、年末は300㌔~400㌔送った。原永参事によると、羽田市場を通じて日本各地以外にシンガポール、アメリカなど海外へも送られている。

 今年2月から神戸や広島の日本食専門店への出荷を始めた。町内の料理店を通じて取引の話があったのがきっかけ。宅急便(ヤマト運輸)のクールで送っている。

 島内では、奄美市名瀬有屋町にある「いずみストアー」と取引している。今は、奄美漁協本所市場で競りはしていない。

 今月5日午前中は、漁船7隻の魚介類の出荷作業をし、サンエーや羽田市場などに送った。箱詰めした魚が傷つかないようにビニールで覆い、大きめの魚は1匹ずつビニール袋に入れていた。漁業者は「沖締めは手間がかかるが、慣れればうまくやれる。魚の値段が安定しているのが利点」と話し、原永参事は「各取引先での奄美鮮魚の評判は上々」と手ごたえを感じている様子だった。

 奄美鮮魚の評価、知名度向上につなげている奄美漁協笠利地区での挑戦は、他漁協の参考となりそうだ。