クルーズ船寄港地誘致に賛否

クルーズ船寄港地誘致に賛否

クルーズ船寄港誘致計画についての説明や意見交換が行われた瀬戸内町町政懇談会が16日から始まった=16日午後、管鈍集落公民館=

「懸念内容一つ一つ確認」 説明に注力、方向性未定
瀬戸内町町政懇

 瀬戸内町は16日から町内各所で行う予定の町政懇談会を開始した。初日となった同日は管鈍集落公民館と、久慈集落公民館の2カ所で実施。同町西古見集落にクルーズ船寄港地を誘致する計画について、眞地浩明企画課長が登壇し、これまでの経緯や目的、現状などを説明。意見交換では賛否両論の意見が多く出た。これに対し町側は、「正確な情報を持ち合わせていないことが皆さんの不安や懸念の背景にある」、「この話の答えを出すためには検証をしなければいけない。国・県と話をさせていただきたい」などとした。

 同町は昨年12月、県に対し同町西古見地区へのクルーズ船寄港地誘致に伴う支援を求める要望書を提出。町民に説明のないままの提出が明らかになった後、計画への反対団体が立ち上げられるなどの混乱を招いた。鎌田愛人町長は3月の町議会で「説明と配慮が足りず、町民に迷惑をおかけしている」と陳謝し、計画を白紙に戻し、町民に対する説明会開催を約束していた。

 この日は管鈍集落公民館(西古見、管鈍、花天住民対象)と久慈集落公民館(久慈、古志住民対象)の2カ所、時間をずらして実施。対象集落外の住民、出身者なども多く参加した。最初に鎌田町長が、施政方針に掲げる主要施策を説明。その後、眞地課長がクルーズ船誘致について解説した。眞地課長は同町がクルーズ船寄港地誘致をきっかけに、▽廃校を利用した企業誘致▽大学や専門学校などと連携した古仁屋高校への「国際観光学科」の設立▽医療機関の開設▽宇検村との連携による西方地区全般の振興―なども視野に入れているとした。

 また、▽西古見の生活環境が守られるのか▽生業に関わる漁場が一つ失われる▽治安の悪化▽地元企業に経済効果はない―など、議会では答弁を控えていた懸念事項についても列挙し、「メリットだけで飛びつくようなことはしない。懸念されている内容を一つ一つ確認していきたい」とした。

 西古見住民を含む管鈍会場の意見交換では「出身者の意見も聞き、自然を守ってほしい」、「漂着物などを撤去し、早く進めてほしい」などの意見があった。また、「国との協議の場に上がるために条件などはあるのか。協議前に住民に知らせるのか」という質問に対しては「白紙に返ったという思いで、事実を町民に伝える段階にある。すぐ動くことや、秘密裏に動くつもりもない」とした。久慈の会場でも「伝染病や、養殖漁業への影響なども懸念される」などといった声が上がった。

 西古見集落の茂節子区長(73)は「昨年8月に西古見で説明したまま進んでいない。白紙に戻るということだったが、人口も減っているので、何とかしたいが、出身者じゃない人が反対している状態。もっといろいろ話を聞いて判断したい」と話した。

 また2会場での町政懇談会終了後、鎌田町長は「一部の集落などにしか説明できていなかったことは、配慮が足りなかったと反省している。説明会終了後、国と県の協議に上がった場合はメリット・デメリットを町民に説明し、その後のことは説明していく中で検討していたい」と語った。また眞地課長も「西方は危機的な状況にある。いろいろな混乱があるからやめるのではなく、真実を確認していく」とした。

 町は5月30日までに町内全校区、地区を対象にした同懇談会の開催を予定。また、懇談会終了後には資料や意見、提言をまとめたものを全戸配布する予定。説明に全力を注ぐとし、同懇談会終了後の大型クルーズ船寄港地誘致計画の方向性などはまだ定まっていないという。