三重県へ千㌔の旅

龍郷小から放されて三重県伊勢市の海岸で発見されたアサギマダラの個体(提供写真)

マーキングした個体を放す龍郷小の児童たち(提供写真)

アサギマダラ北上例、初確認
龍郷小、春のマーキング活動で

 アサギマダラへのマーキング活動で環境大臣賞を受賞した龍郷小学校(橋口俊崇校長、児童26人)の児童などがマーキングして放した個体が5日、約千㌔離れた三重県に飛来したことが確認された。同校は校庭から放した個体の北上例の初確認を喜び、今後の活動継続で北上ルート解明に期待を寄せている。研究者によると、南西諸島から本州などへの北上例は、あまり確認されてなくまれな例だという。

 アサギマダラは渡りをするチョウ。春に南西諸島から本州へ北上し、夏にはその子孫が涼しい高地に滞在、秋には南西諸島を目指し南下する。

 同校では2008年に、石川県の宝達山から飛来したマーキングのあるアサギマダラを再捕獲したことから、宝達小とマーキング活動の情報交換など交流を継続。これまで秋に長雲峠に南下する個体のマーキング活動を主としていた。3年ほど前から北上ルート確認目的で吸蜜植物のハンダマ(スイゼンジナ)を植えてきていて、昨年は花壇の栽培面積を増やしアサギマダラの飛来に備えていた。

 ハンダマの効果はてきめんで、今年の3月末から校庭にアサギマダラが飛来。4月から毎日マーキングして放した個体数を計測。アサギマダラは5月2日を最後に捕獲されなくなり、累計で200頭以上にマーキングしたという。

 ピークは4月19日で42頭にマーキングして個体を放し、そのうちの1頭が三重県伊勢市の海岸で確認されたもの。発見者は三重県鳥羽市在住の環境省アクティブレンジャーの半田俊彦さん(42)。海岸植物の調査で5日、スナビキソウの蜜を吸うアサギマダラを発見し、写真でマーキングした個体と分かり、これを放した人を探していた。

 マーキングから放したのは同校でないかと推測し、連絡を取り合ってこの個体が4月19日に奄美大島から北上し、約960㌔離れた三重県伊勢市に飛来した北上例と確認したという。半田さんは、「アサギマダラが約960㌔の長距離移動したことを、自分の目で確認できて感動を覚えた。環境教育にも携わるので、三重の子どもたちにも貴重な発見例になると思う」と、発見した喜びを語った。

 橋口校長は、「アサギマダラのマーキング活動は、本校の教育活動の特徴の一つ。この活動を通して、児童たちには身の回りの自然に興味を持ってもらい、探究心を育みたい。発見例が増えるよう活動を継続し、北上ルートの実態が明らかになれば」と話した。

 長年アサギマダラの移動調査に取り組んでいる医師で群馬パース大学学長の栗田昌裕さんは、毎年約1万頭のアサギマダラにマーキング。南西諸島への南下では喜界島などを訪れ、再捕獲により移動ルートの解明に取り組んでいる。

 栗田さんは北上例について、「1980年代からマーキング活動は行われているが、最初に確認されたのは2004年に奄美大島から兵庫県三木市に移動したもの。同じ年に喜界島から長野県茶臼山に飛来した例もある。南西諸島では春にマーキングされた個体数が少なく、北上例の発見はまれである」と語った。