世界自然遺産講演会 徳之島

IUCNの「登録延期」勧告を受けて開かれた世界自然遺産講演会(右・星野氏、左・深谷氏)=13日、徳之島町文化会館

「確実な遺産登録の道示された」
IUCN勧告 推薦書再提出の可能性示唆

 【徳之島】徳之島3町主催の世界自然講演会が13日夜、「世界自然遺産への道は絶たれたのか!?~まずは知ることから始めよう~」をテーマに徳之島町文化会館であり2氏が講演。国際自然保護連合(IUCN)の登録延期勧告に、星野一昭鹿児島大学特任教授(元環境省自然環境局長)は「遺産の価値は否定されなかった。確実な遺産登録の道を示してくれた」と強調。来年2月の推薦書再提出の可能性も示唆した。

 国連教育科学文化機関(ユネスコ)の諮問機関のIUCNによる、世界自然遺産候補地「奄美大島、徳之島、沖縄島北部および西表島」の登録延期勧告を受けての開催。▽星野氏が「登録が延期された理由を探り、島の今後の取り組みを考える」、環境省自然環境野生生物課の深谷雪雄氏(元小笠原村初代環境課長)が「世界自然遺産小笠原諸島を守り活かす取り組み」―を演題にそれぞれ講演。行政や議会、一般住民など約400人が聴講した。

 奄美・琉球世界自然遺産候補地科学委員会のメンバーでもある星野氏は、IUCNの勧告概要で、登録に必要な「3条件」のうち①遺産価値②保護管理は「適合」した。③区域設定については、沖縄北部やんばる地区を例に「遺産区域の分断(連続性がない)」ことなど指摘事項を解説。

 衝撃的な勧告だったが「遺産価値は否定されなかった」。国・県・市町村、地域団体・住民が約束した取り組み(保護など行動計画)の実現を前提に「保護管理も評価された」と強調。その上で区域選定に関して「(沖縄)北部訓練場返還地の編入を助言してくれたことは、確実な遺産登録の道を示してくれた」との観測も提示。

 包括的管理計画書に記載の徳之島行動計画(希少種保護、侵略的外来種への対応強化、ネコ対策)なども解説。まず島民や関係機関が、①島の自然を知る②島(シマ)の暮らしや伝統文化の再確認③遺産価値の保護に役割を果たす④島の豊かな未来を考えた地域づくりを推進。「徳之島の未来を決めるのは島民の皆さん。世界自然遺産登録に主体的にかかわって欲しい」とアピール。

 現推薦書を取り下げ再提出の場合は、包括的管理計画や地域別行動計画に必要な修正を加え、来年2月1日までに行われる可能性も示した。

 今年3月末まで小笠原村環境課長として出向した深谷氏は、2011年6月に世界自然遺産登録を勝ち取った小笠原諸島の概要、外来種対策を中心とした保全管理の取り組み、自然遺産と地域の関わりなど先進事例を紹介。「課題への対応に特効薬はない。地道な対話の積み重ね、試行錯誤が大事」ともアドバイスした。

 引き続き意見交換もあった。