「確実早期の登録実現目指す」

IUCNの評価結果説明があり世界自然遺産登録推進に向けて課題などを協議した

評価結果など説明 環境省、地元意見聴き方針
世界自然遺産登録推進協

 奄美群島の世界自然遺産登録推進協議会(会長・朝山毅奄美群島広域事務組合管理者)は23日、奄美市名瀬の奄美会館会議室で2018年度の協議会を開いた。環境省、県自然保護課、県大島支庁などから世界自然遺産登録に向けた取り組みを報告。IUCNの登録延期勧告などの説明があり、住民の意識や登録ありきで進んできたことを課題とする意見が聞かれた。環境省は、「確実早期の登録実現を目指し、地元の意見を聴いて方針を定めたい」とした。

 会長あいさつに続いて、環境省那覇自然環境事務所の東岡礼治所長が「奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島」の世界自然遺産推薦に関したIUCN評価結果と勧告の概要を解説。東岡所長は、「IUCNは、推薦地が分断されていることや、沖縄の北部訓練場返還地が推薦地に含まれていないことなどから延期を勧告。再推薦までには米軍とのさらなる調整、推薦地管理に地元自治体などの参画推進、奄美大島の私有地の取得推進を指摘されている」とした。

 続いて県自然保護課奄美世界自然遺産登録推進室の大西千代子室長が、登録に向けた課題と取り組みを「奄美群島持続的観光マスタープラン(概要)」の資料で説明。主な取り組みとして、▽世界自然遺産奄美トレイル▽奄美自然観察の森再整備▽利用適正化実証実験―など例示。登録延期勧告に関して国の方針が決まった場合、県が予定する登録記念イベント(パブリックビューイング、世界自然遺産シンポジウムなど)の実施判断を行うとした。

 県大島支庁衛生・環境室の赤﨑昭一室長が、17年度実施の「奄美群島世界自然遺産登録サポート事業」を報告。「今年度も同様の事業に取り組み、普及啓発や希少野生生物などの保護対策を積極的に推進する」と発表した。

 奄美群島広域事務組合からは、17年度のエコツーリズム推進事業実績報告と18年度の事業計画を説明。「初期段階育成事業で58人が修了し、累計116人を育成。認定ガイド講習では群島全体で、62人のエコツアーガイドが誕生した」と報告した。

 報告事項の後に質疑応答を実施。参加者から「住民の意識が課題。ネコを放し飼いにする人がいて、ノラネコが多くみられる」、「登録ありきで進んで来た感がある。地元の認識が足りなかったと思う」といった意見のほか、「登録に向け行政が説明して、住民の協力をもっと仰ぐべきだったのではないか」や「勧告で延期とされて、世界遺産委員会で登録とされた事例は」といった質問があった。

 会議終了後に報道陣の質問に対し、東岡所長は「現時点で今後の対応方針は決まっていない。地元の意見をしっかり聴いて、確実かつ早期に世界自然遺産登録を目指す。できるだけ早く対応方針を決めるということで進めていきたい」と強調。地元への説明に関し、「14、15日に環境省の自然環境計画課長と自身が、県庁や自治体を回ってIUCNの評価報告書の内容などを説明した。地元の色々な意見も聴いた」とした。