加計呂麻でサンゴ一斉産卵

加計呂麻でサンゴ一斉産卵

2日夜、瀬戸内町加計呂麻島の実久海岸の沖合でサンゴの産卵を確認(=興克樹さん撮影)

興さん撮影「力強い営みに感動」
幼生の供給源として重要

奄美海洋生物研究会会長で自然写真家の興克樹さんが2日夜、瀬戸内町加計呂麻島の実久集落沖合でサンゴの産卵(ミドリイシ属の一斉産卵)を撮影した。産卵は樹枝状のトゲスギミドリイシや、卓状のクシハダミドリイシなど約10種類のサンゴで確認された。興さんは「サンゴは回復傾向。サンゴの回復が遅れている海域に多くのサンゴ幼生が定着してくれれば」と期待している。

撮影は満月から4日後となる2日午後10時半~同11時半にかけて、奄美群島国立公園の大島海峡海域公園地区に隣接する集落から北東約1㌔で墓地の沖合50㍍、水深3㍍の地点で実施。同時刻帯に次々とサンゴ群体が産卵し、直径0・5㍉ほどの大きさの淡いピンク色のバンドル(卵と精子の入ったカプセル)を放出。バンドルはゆっくりと浮上して海面ではじけ、他群体のバンドルの精子や卵と受精。プラヌラという幼生になり数日から数週間浮遊し、適地に定着してサンゴとして成長するという。

興さんによると、今回の撮影地である実久海岸から北東側に連なるサンゴ礁は、2000年から02年のオニヒトデ大発生により壊滅状態に。07年ごろからサンゴの小型群体が散見できるようになり、現在では生サンゴ被度(海底に占める生きたサンゴの割合)が80%を超えるほど勢いよく回復しているという。

昨年夏の白化現象により浅所のサンゴの一部は死滅したが、大部分のサンゴが白化の影響もなく無事に産卵。興さんは「大島海峡のサンゴ群集は観光資源や、サンゴ幼生の供給源としても重要なもの。産卵ピーク時には前が見えないほどで、力強いサンゴの営みに感動した」と語った。