喜界でサンゴシンポ

奄美群島サンゴ礁保全対策協議会主催のシンポジウムが開催された。各島のサンゴ礁の状況、保全に向けた取り組みなどが発表された

回復傾向、災害影響も
連携した全体的取り組み重要

 奄美群島サンゴ礁保全対策協議会(会長・平田博行奄美市環境対策課長)主催のシンポジウムが9日、喜界町役場であった。喜界島、奄美大島、徳之島、与論島でサンゴ礁保全に取り組む4人が登壇し、それぞれ活動などを紹介。大量のオニヒトデ発生から回復した事例、気象災害による影響などサンゴ礁を取り巻く現況などが報告され、群島全体での連携した取り組みで、保全を推進していく重要性が呼びかけられた。(9面関連記事)

 喜界島サンゴ礁科学研究所の研究員、駒越太郎氏は、日頃の調査活動や市民への普及活動(サイエンスカフェ等)などを紹介した。2015年から、早町港で調べてきた水温に関するデータなどを一部取り上げ、最近までの状況を説明したほか、17年8月発生の台風、9月の記録的豪雨後に水温が低下した結果などについて報告した。

 「50年に1度」の9月の豪雨では、がけ崩れによる土砂がサンゴ礁に流入し、「場所によってはかなり堆積している場所も。早町港では、20㌢弱の泥が低層につかり、サンゴの群体もかなり死滅しているのが確認された」という。

 ティダ企画㈲の興克樹代表は、瀬戸内町の加計呂麻島・実久でのサンゴ礁について、オニヒトデにより一時壊滅状態だったサンゴ礁の回復した現在の状況などを説明した。

 サンゴ白化の発生状況を把握するための活動など、群島内の連携が重要とし、「サンゴは各地で回復傾向。サンゴの分析が進んでいない地域も含め、研究者との連携を図りながら、多様性の保全も大切。モニタリングを続け、有事体制を整える必要がある」と呼びかけた。

 徳之島・工房海彩の池村茂代表は、浅い海域の岩などへの着生状況などもふまえ、サンゴの回復傾向に注目。干潮時には、むき出しになるにも関わらず、「過酷な条件でもサンゴは育ちながら、進化している可能性もあるのでは」などと推測した。

 ヨロンの海サンゴ礁再生協議会の渡辺暢雄事務局長は、地下水分析などから予想される、生活排水や農畜産業が与えている影響について言及。サトウキビ栽培における肥料の与え方で発育状況を比較する実証実験を行った。

 施肥のタイミングをずらして(成長期に集中して与える)育てたサトウキビエリア(A)、従来通りに与えるエリア(B)では、年間の肥料コストは同等だが、「結局、肥料が無駄になった畑はその分収量も落ちる」という。

 「サトウキビは成長期の時にたくさん吸収する」が、早いタイミングでの施肥では「食べ残しとなり、雨が降れば地下に浸透していく」などと、懸念される影響について触れた。

 子どもたちへの環境教育も重要としつつも「サンゴの専門家だけでは解決できない。陸の課題も解決しなければ。本当の改善、対策に向かうには広い範囲でプロジェクトを作っていく必要があるだろう」などと訴えた。

 後半は、興氏をコーディネーター役にパネルディスカッションも行われ、来場者らからの質疑に応えながら意見交換した。

 環境省奄美自然保護官事務所・自然保護官の岩本千鶴氏は「サンゴというのはまだまだ分からない所も多く、中長期的にモニタリングしながら、詳細を見ていくことが大切だろう。一番大事なのは連携というところ。地域の一人一人の協力がパワーに。理解・関心を持ってもらえる人が増えることも力になっていく」などと話し、全体的に取り組む重要性を呼びかけた。