病害虫天敵相の調査必要

病害虫天敵相の調査必要

奄美の環境保全型農業に生物的防除の助言をした坂巻准教授

放送大学公開講座 奄美の環境保全型農業テーマに
「まだまだ模索必要な段階」

 放送大学鹿児島学習センターと県立奄美図書館は17日、奄美市名瀬の同館研修室で第63回公開講座を開いた。講師の鹿児島大学学術研究院の坂巻祥孝准教授が、「離島における環境保全型の病害虫対策の展望」のテーマで講演し、外来病害虫の問題に離島の環境保全型農業をどのように推進するかなどを学んだ。

 坂巻准教授は、日本を世界でも農地あたりの農薬使用量が多い国と指摘。「害虫防除に天敵利用が最も進んでいるのは、オランダで農薬使用量も減らすことに成功している」とした。

 坂巻准教授は「農薬使用は害虫防除の主流で省力的・経済的な長所もあるが、使い過ぎにより生態系への悪影響など短所もある」と説明。害虫防除法にあらゆる防除手段を相互に組み合わせる総合的害虫管理(IPM)の手法を取るようアドバイスした。

 各害虫に対応する市販の生物農薬は外国製が主で高価なため、土着の天敵を自前で安価に増やす鹿児島県や高知県の事例を紹介。「奄美でもハウスなどの野菜の害虫防除をするのなら、有効な土着の天敵相の調査が必要になる」と語った。

 奄美でも可能な生物的防除として、ほ場の周囲にブルーサルビアを植えたり、小麦フスマに捕食性ダニ(ケナガコナダニ、サトウダニ)を増やして野菜に散布するなどの手法を提案。喜界島ではかんきつ類の害虫ゴマダラカミキリに、土着の糸状菌を用いた微生物農薬バイオリサで防除した事例が紹介された。

 坂巻准教授は「奄美での環境保全型の病害虫管理は、天敵となる昆虫などがよく分かっていない現状で、まだまだ模索が必要な段階」と総括した。