奄美市出身 画家・津江三千子さん個展

作品を前にする津江さん。交流のあるシンガーソングライター・一樹さんは、津江さんの絵をCD表紙に採用している


「生命力を感じます」とギャラリーを訪れた人たちに、説明ずる津江さん(右)

幻想的な作品に魅了
東京銀座のギャラリーで開催中

 【東京】奄美市名瀬出身の画家・津江三千子さんの個展が、東京・銀座の「銀座幸伸ギャラリー」(中央区銀座7―7―1)で開催中だ。心象風景などを中心に日本画21点を展示している。記録的な暑さの続く中ギャラリーを訪れた人たちは、津江さんの笑顔と幻想的で魂の鼓動が伝わってくる作品に魅了されていた。

 津江さんが、本格的に絵に取り組んだのは、38歳のとき。下の子どもが幼稚園に通い始め時間ができたため「軽い気持ち」でスタート。絵画教室に入り、その後、埼玉県展で入賞を重ねて、県芸術家協会員に。

 日本画を本格的に学ぶきっかけとなったのは、あるとき、古本屋で「平家納経」を手にしたこと。その、金箔=きんぱく=と銀箔による装飾の美しさ、そこに広がる世界観に強く引かれ「装飾美を自分なりに表現したい」。そう思った津江さんは、53歳で武蔵野美術学園へ入学した。

 日本画の基礎を1年間習得し、2年目からは日本画の研究室へ。計3年間、専門的な日本画の技法を学んだ。やがて、2003年の第57回女流画家協会展で入選。ほかに、ベルギー・オランダ展大賞、日・仏展優秀賞など、その才能を大きく花開かせている。

 国内外で評価される津江さんの同ギャラリーでの個展は今回で4回目。展示のテーマは「ささやくものたち2018」。なかでも圧巻なのが、完成までに半年間かかったという、縦162㌢、横260㌢の「波濤瀑布サガリバナ図」。一晩限りで花を散らす奄美大島を北限にする「サガリバナ」が、金、銀のほか、たくさんの色で描かれ、見ている人を原生林に誘う。生命のはかなさの一方で、力強さにあふれ魅惑的な香りも漂ってくるようだ。

 津江さんの作品の根底にあるのは、高校時代まで過ごした、奄美の原風景。「描く立場になって、あらためて奄美の森の精霊やエネルギーを実感しています。ささやくものたちとは、自然の中にあるのです」。研ぎ澄まされた感性でそれらを受け止め、カンバスに情熱を込めているのだ。訪れた人たちは「作品に生命力を感じます」と話していた。

 個展は29日(日曜)が最終日。午前11時から午後6時まで(最終日は午後5時)となっている。