「遺志くみ沖縄と奄美交流」

昨年11月に対馬丸慰霊碑で献花を行った沖縄県の翁長知事(宇検村船越海岸)

翁長沖縄県知事死去、宇検村関係者

 「気配りのきく知事だった」――。対馬丸慰霊碑を建立した宇検村の元田信有村長は、昨年11月の沖縄県の翁長雄志知事の訪問時の印象を振り返った。翁長知事は8日、膵臓=すいぞう=がんにより入院先の浦添総合病院で死去した。67歳。同村宇検の対馬丸慰霊碑に翁長知事が献花した際には、平和への思いと奄美と沖縄の交流などを訴えていた。同村の関係者などから知事の早すぎる死を悼み、残念がる言葉が聞かれた。

 元田村長は翁長知事の訃報に接し、「対馬丸事件を通して、昨年宇検村に来ていただいた。慰霊碑に献花していただき、奄美と沖縄の交流を深めたいとの言葉もあり、これからという時期に早すぎると思う」と落胆の色を見せた。

 知事が来村して慰霊碑に向かう時に、宇検集落の住民が歓迎する様子を見逃してしまい後ほど人づてに謝意を伝えたエピソードを紹介し、「テレビなどで拝見する知事とは違い、気さくで周りの人に気配りのきく知事だった」「基地問題など平和には、自分の信念をかけていた。対馬丸でこれからの(沖縄との)交流が期待されるところだった。知事の遺志を大事に思っていきたい」と語った。

 対馬丸慰霊碑建立実行委員会の委員長だった川渕昌春さん(前宇検集落区長)は、「大変、残念。重い病気に侵されながらも、基地問題など取り組んでおられた。亡くなるのが早すぎる。知事の遺志をくんで、沖縄と奄美の交流実現に協力したい」と哀悼の意を表した。

 同村は対馬丸事件の犠牲者の鎮魂を願い昨年3月、宇検の船越海岸に慰霊碑を建立し沖縄から遺族などが招かれ除幕式を実施。11月25日には沖縄県側が奄美群島との交流促進を目的に「奄美・沖縄交流拡大事業キックオフイベント」で訪問団を派遣。翌26日は大和村の奄美野生生物保護センターを視察し、宇検村の対馬丸慰霊碑を訪れ翁長知事が献花を行っていた。