沖縄県・翁長知事が重視した相互交流へ

奄美との交流連携を呼び掛けた故翁長沖縄県知事(写真中央、昨年11月撮影)

「奄美との交流拡大・連携を」
次世代継承、平和教育、運賃支援など展開

 奄美と沖縄間の交流を促進しようと沖縄県は、観光や交通など様々な分野で「交流拡大事業(交流事業)」を進めている。2018年度は奄美・沖縄地域の世界自然遺産登録に向けた体制づくり「次世代継承交流事業」、宇検村で子どもたちが交流する「対馬丸平和学習交流事業」を新規で実施。また運賃支援や観光交流と合わせ、各事業を展開中。8日、死去した翁長雄志沖縄県知事が奄美との交流を重視していたことを踏まえ、同県側は相互交流の拡大にこれまでと同様、取り組んでいく方針だ。

 交流事業18年度計画によると、新規の「次世代継承交流事業」(21年度まで4カ年計画)は、世界自然遺産登録の候補地(奄美大島、徳之島、沖縄島北部および西表島)の現地視察を予定。全候補地を年1カ所ずつ訪問するという。

 すでに奄美側の8自治体、奄美群島広域事務組合、環境省との協議に着手。来年度以降の本格実施を目指し、さらに登録実現後も継続する意義を強調。「今年度は交流プログラムの策定、視察先の選定など計画をまとめたい」(自然保護課)。

 同じく新規事業「対馬丸平和学習交流」では、沖縄本島から小・中学生と保護者約30人が宇検村を訪れ、対馬丸事件をテーマに反戦平和について学習。今月17日から2日間の日程で、地元の子どもたちとの歴史の継承など研修会を開く。単年度事業での相互交流実現について、平和援護・男女参画課は「関係機関と対応を検討する」とした。

 16年度からスタートし鹿児島と沖縄両県で予算措置する航路・航空路の運賃支援「連携交流促進事業」。フェリー航路と琉球エアーコミューター2路線(那覇―奄美大島、与論島)に加え、7月開設した奄美群島アイランドホッピングルートで沖永良部―那覇間での運賃低減を実現。同事業は今年度終了するが、「奄振法延長の動向を見据え、鹿児島県と今後の事業措置を調整、検討していきたい」(地域・離島課)と継続に前向きな意向。

 「観光・交流連携体制構築」事業はこれまで、観光プロモーションや現地ガイドによるエコツーリズムを掲げ、観光の促進を図った。

 今後について観光振興課は自然遺産登録の早期実現を見据え、ツアーガイドの知識共有など受け入れ態勢の構築を進める方針。「各地の観光振興を一層、促進したい」(同課)。

 「様々な分野で2つの地域のさらなる交流促進、連携した地域振興に尽くしたい」――。

 昨年11月、奄美大島内で開かれた交流事業の推進を呼び掛けるキックオフ(開始)イベントで、来島した翁長知事は奄美の自治体首長を前にこう宣言した。両地域の世界自然遺産登録を契機とし、次世代レベルでの交流活性化に意欲を見せていた。

 秘書課は「知事は奄美に対し、思いがあった。副知事も奄美との交流事業の重要さを認識している」として、沖縄県側は地域の相互交流の姿勢に変わりない意向を示した。