龍郷町にAIS地上局

龍郷町にAIS地上局

船舶情報の送受信ができるAIS地上局を設置

安全情報や安全操業へ
漁協組合員の要望受け設置

 航空エンジン・宇宙機器の技術支援、製造など扱う㈱IHIジェットサービスは14日、龍郷町長雲の奄美自然観察の森内に船舶の航行データなどが送受信可能なAIS(船舶自動識別システム)地上局を設置した。AISで得られた情報は同町に無償提供され、海洋の安全情報、漁業協同組合にも提供し漁船の安全操業を図るとしている。

 AISは2002年に始まり、洋上を航行する船舶の衝突予防や人命安全の観点から、海上人命安全条約(SOLAS条約)により300総㌧以上の旅客船や国際航海に従事するすべての船舶に搭載することが義務化。運用することで、▽船舶を識別する▽目標物の追跡を支援▽航海情報の交換を容易化▽衝突防止に役立つ情報の提供▽無線電話による船舶通報を減らす―などの効果を期待。

 AISは国内各地で設置が進んでいるが、奄美群島や沖縄本島には民間分は未設置。遭難や事故防止といった海上の安全面などから、漁協組合員から設置が望まれていた。

 AISを南西諸島などで整備したい同社に後輩がいる宇検村の佐々木一宇さん(73)が、過去に同村の漁船が沖縄まで流され台湾の船に救助されたことなどからAISを奄美大島に設置できないかと考え、同町の奄美漁協組合員・窪田圭喜さん(77)に、設置に適した場所探しなどを相談した。窪田さんと佐々木さんは4月に、AIS地上局の設置が長雲峠で出来ないか町当局に提案していた。

 その後、AIS地上局に関して何度か協議し、同地の展望台付近に設置することが決定した。設置や維持管理は同社が行い、町側は用地や電源を提供した。

 地上局のアンテナは高地では、約100㌔の範囲の船の信号を捕捉可能。AISを利用する船舶はAISトランスポンダーという装置を整備する必要があるが、助成制度を活用する場合は約2万円の個人負担で設置できるという。

 この日は町当局が立ち会い、アンテナに電気を通して船舶情報の受信や発信状況などを確認。同社衛星情報サービス部の高橋衛主幹は、「場所を探していた所に地元から話を受け今回整備できた。受信状況を見ながら、できれば沖縄までカバーしていきたい」と話した。

 設置を要望した窪田さんは、「情報は漁協にも提供されるので、安全操業できるよう各漁船に発信機をつけてもらうよう勧めたい」と語った。