「平井Red」来年から苗木供給へ

「平井Red」来年から苗木供給へ

タンカン新品種「平井Red」の紹介、普及方法などの説明があったJAあまみ果樹部会全体総会

JAと許諾契約 「垂水1号」棲み分けで振興
JAあまみ果樹部会全体総会

 JAあまみ大島事業本部果樹部会(大海昌平部会長)の全体総会が28日、奄美市名瀬朝戸の市農業研究センター会議室で開かれた。品種登録出願されたタンカン新品種「平井Red(ヒライレッド)」の紹介や種苗法、今後の普及方法の説明があり、平井果樹園と許諾契約を交わした上で同部会が窓口となり奄美大島での産地振興を目指す。来年から苗木供給に取り組み試験栽培、翌年からの本格的な普及につなげる。

 部会員約460人のうち、かんきつ農家や行政関係者など約100人が出席。これまでは各支部で総会が行われてきたが、農家の交流が少なくなっているとの声が若手部会員から挙がり、初めて全体的な総会が開かれた。新規就農者の紹介もあった。

 「平井Red」の紹介は、園主の平井孝宜さんが行った。それによると、現在普及しているタンカン品種「垂水1号」と比べた品種特性として▽1月中旬には完全に着色することから、着色が早く紅が濃い▽成熟期における糖度は同程度だが、クエン酸切れが2~3週間早く、上場(山間部)なら1月中旬から収穫可能、下場(平場)なら1月上旬からの収穫が可能と推測される▽油胞数が多いため果面が滑らかで、黒点病軽減▽果実のじょうのう膜は変わらず、軟らかく食べやすい―などがある。

 平井さんは「減酸が早いため収穫を前倒しできるのが最大のセールスポイント。これにより12月の『津之輝』、1月の『平井Red』、2~3月の『垂水1号』と奄美大島産のかんきつが4カ月間も販売できることになる。生産農家の作業員雇用期間の拡大、かんきつの流通面にプラスになるほか、選果場の利用効率化も期待できる」と語った。

 種苗法の説明では、品種登録制度により新品種を育成した人には「育成者権」が与えられ、他の農家などへの苗木や穂木の譲渡は、有償無償を問わず育成者権者の許諾が必要。許諾無しで行うと団体・個人を問わず罰せられる。新品種「平井Red」の奄美大島での普及にあたっては、許諾契約は平井果樹園とJAあまみ果樹部会間で契約書が交わされ、これを経て苗木業者が種苗生産に取り組む。

 苗木の配布にあたり、穂木採集用母樹は平井果樹園が管理し、苗木は原則として目接ぎ苗(春芽)を利用する。春芽の方が品質は安定するという。品質重視面で、台木は「カラタチ台」を指定している。他の品種との交配、他産地への流出を防ぐため、補植や混植を禁止し、園地を登録にすることで植栽を管理する。

 大海部会長は「奄美大島各地での試験栽培に向けて来年には500本の苗木供給を行い、再来年には倍以上供給し、本格的な植栽を目指したい。現在の品種である『垂水1号』と棲み分けを行うことで、奄美大島でのかんきつ農業の振興が図られる」と話した。