台風の暴風に異常潮位の満潮が重なり、約17年ぶり悪夢の再来に=30日午前、伊仙町面縄港

伊仙町の面縄港・鹿浦港・前泊漁港
17年ぶり「悪夢の再来」に

 【徳之島】「万策尽きた。漁業者のみなさんが気の毒で言葉もない」―。大型で非常に強い台風24号の襲来は徳之島地区でも住家の被害や基幹作物サトウキビの倒伏・折損、肉用牛生産基盤の牛舎の損壊など深刻な被害をもたらした。とりわけ暴風と異常潮位の満潮時間帯の重なりによるとみられる高潮では、漁港敷地に陸揚げ避難中の漁船に深刻なダメージを与え、約17年ぶり「悪夢の再来」となった。本格的な被害調査は1日以降となる。

 とくのしま漁協の関係者らによると、台風24号の接近による暴風と満潮時間帯が重なった29午後9時ごろ、伊仙町では面縄港岸壁や面縄浜の護岸堤を越波した高波が町道を走って県道交差点に押し寄せ、県道交差点は雑草や漂着物ごみに埋まり、翌朝の除去作業まで通行止めとなった。

 17年前同様、低気圧による海面の吸い上げと満潮時、暴風の重なりによると見られ、面縄港の船揚げ場に避難保管していた漁船は折り重なるように後背地に打ち上げられて損傷し、1隻は流出不明に。同町犬田布の前泊漁港でも2隻を流失、1隻が流され係留泊地内に沈没。ほか数隻が面縄港同様に折り重なり、FRP製の船体に穴が開くなど損傷被害を受け、鹿浦港でも1隻が流失した。

 30日朝、前泊漁港に駆けつけていたとくのしま漁協の元田隆丸組合長(88)は「17年前と同様の被害に遭い、言葉にならない。17年前の被害以降、防波堤のかさ上げや消波ブロックの追加、沖防波堤の整備、係留場、船揚げ場をかさ上げしてもらうなど町側も尽くしてくれた。出来る事は全てやっていただいた。自然を相手に万策尽きた感じだ」と肩を落とした。

 再び被害に遭った組合員の1人は「昨年9月に新しいエンジンに更新したばかりだった。船体に穴や亀裂が生じると修復は不可能」と落胆を隠せない。元田組合長は「漁業経営がせっかく軌道に乗りかかった中で、こういう状態が数年に1回訪れるとは気の毒で言葉もない。県とも話し合い、できるだけの救済措置をお願いするしかない」。近く県側が現地調査入りする予定という。