高潮被害で〝不毛の地〟に一変した農地や農道＝２日午前、伊仙町伊仙の海岸部
「竜巻の可能性も？」―コンクリート造の自宅（右）の頭上を越えて町道に落下、大破した倉庫のがれきの撤去に当たる住民＝２日午前、伊仙町目手久
【徳之島】台風24号の直撃による暴風・高潮被害などの実態が調査の進展とともに明らかになりつつある。伊仙町では漁、船や漁港施設の被害に加え、海岸線に面した農地や農道も深刻な高潮被害を受けていた。おびただしい被災建造物の復旧作業は、次ぐ台風25号の接近が懸念されるなか人手不足で遅れている。
伊仙町耕地課によると、高潮の直撃被害を受けた海岸線の農地は、▽県営畑総事業実施地区伊仙中部の通称「総海（そううん）海岸」（西伊仙東）―検福にかけた延長約４㌔間に面した約10㌶（40筆）▽目手久海岸の延長約１㌔に面した約２㌶（８筆）▽犬田布同の約４００㍍間の約１・３㌔（４筆）の計約13・３㌶に上った。
高潮によってサトウキビや飼料作物（牧草）など農作物はほとんどが流失。最大で軽トラック大（約３㌧）を含む大小様々な琉球石灰岩や漂着ごみなど雑物が耕土を覆いまるで〝不毛の地〟に一変。農道のアスファルトなども洗掘されて岩だらけの無残な姿をさらしている。
高潮の最高到達点は等高線上で海抜８㍍前後、２００㍍（伊仙崎付近）に及んだ可能性も。時間帯は、陸揚げ避難中の漁船の流失や大破など被害ももたらした台風最接近で東―東南東の暴風に満潮が重なった29日午後９時ごろ以降と予想。２００４年の台風でも、暴風と満潮に低気圧による海面吸い上げ現象が重なったとみられる同様の被害が発生している。
同町耕地課によると、畑の表土流出は最大でも約５㌢程度にとどまっているが、高潮が運び被覆した大量の岩石やごみなど雑物の除去、海水流入が多かった畑は除塩作業も必要。被害推定額は「約１億円」と見込んでいる。
一方、住家や倉庫、牛舎など建造物の被害は調査が進むにつれて拡大の一途にある。高齢者や女性世帯など被災者からは、「被災者が多すぎて、台風25号に備えて応急処置をしたくても頼める人がいない」など共通の悩みも聞こえる。