与論で日本ウミガメ会議

与論で日本ウミガメ会議

ウミガメによる観光と漁業の影響について考えたシンポジウム=与論町=

観光、漁業の関わり考察
各島の事例発表「良い方向でマッチングを」

【沖永良部】第29回ウミガメ会議与論島大会(日本ウミガメ協議会、同実行委員会主催)が10、11の2日日間、与論町中央公民館であった。奄美群島や沖縄県などの事例発表やパネルディスカッションを行い、ウミガメと観光、漁業について考えた。

全国の海洋学者や学生、地元住民ら約150人が参加。同協議会の松沢慶将会長は「将来、ウミガメとどのように付き合っていくのか、真剣に考えるべき岐路に立っている。会議で意見や知恵を共有したい」とあいさつ。

シンポジウムでは、与論島、奄美大島、徳之島、沖永良部、沖縄県座間味島の五つの島におけるウミガメの現状が紹介された。

与論町役場環境課の光俊樹さんは、地元の漁業関係者が懸念しているウミガメによるモズク養殖場の食害について1カ月間調査したが、収穫終了後の調査だったため「食跡は確認できなかった」と報告。また、同事例について沖縄県の有識者にヒアリングをした結果、「ウミガメの解剖結果から胃にモズクが存在した例はほとんど確認されていない」との返答があったとした。

沖永良部ウミガメネットワーク代表の山下芳也さんは、アカウミガメとアオウミガメの上陸数・産卵数について「両方ともここ3年間で減少している」「島周辺にいるウミガメが全て沖永良部で産卵しているわけではない」と話した。

座間味村役場の宮里俊輔さんは、漁のじゃまとなるウミガメを地元漁師が処分した事例を紹介。「村にとって観光と漁業はどちらも大事だが、今後どうしたらいいか全く見えていない」と訴えた。

続いてパネルディスカッションを行い、黒島研究所の亀田和成さんをコーディネーターに、シンポジウム参加者と地元漁業者、ダイビング業者の計8人が登壇した。

与論町漁業協同組合合同代表理事組合長の阿多美智雄さんは「漁業者から多くの被害報告が出ているが、県の条例でウミガメは守られている。どうすれば被害がなくなるのか日々考えている。観光と自然、漁業が良い方向でマッチングできれば」と呼び掛けた。

2018年に集計された上陸・産卵数、漂着数の報告のほか、大学や研究機関による口頭発表などもあった。