野生イノシシ幼獣 牛舎で〝居候生活〟

牛家族に紛れ込み、牛舎で居候中の野生のリュウキュウイノシシの幼獣=15日夕、徳之島町亀津


「虎の威」ならぬ繁殖牛に寄り添う光景も

徳之島町の福岡さん「かわいい。自然に任せます」

 【徳之島】徳之島町亀津の肉用牛繁殖用の牛舎に、野生のリュウキュウイノシシの幼獣1匹が紛れ込み、約1カ月半にわたって〝居候生活〟を送っている。人への警戒心も薄れ、まるで牛たちの家族の一員のように一緒に配合飼料を食べ、夜は〝家族〟の間に分け入って寝る。専門家も「聞いたことがない」と驚嘆。一気に話題を集めている。

 「最初の目撃は9月25日ごろ。牛舎の牛たちの足元でなにやらボール状の模様のうごめく物体が。目を凝らすと体重2㌔ほどのウリボウ(イノシシの幼獣)だった」。笑顔でふり返るのは生産牛と子牛合わせ計40頭を飼養するなど複合経営を展開する同町亀津の農業、福岡輝男さん(61)・ひとみさん(59)夫妻だ。

 台風24号・25号の来襲後は、牛舎内の牛たちの元へ避難(?)でもしたかのように頻繁に出没。「最初は5、6カ月の子牛の消化不良のふんを懸命に食べていた。牛たちも敵対行動を示さず、逆に互いに懐(なつ)き、牛の間にもぐり込んで平気で寝るようになった」。牛たちの移動時は不意に蹴飛ばされることも多いがくじけない。「今では牛の飼料箱で一緒に濃厚飼料を食べている」とか。

 最近は「自分から2人に寄って来るようになり、とてもかわいい。共同経営の息子も亥(いのしし)歳で『来年の干支(えと)が寄ってきた』とも」。有害鳥獣の代表格で、最初は病原菌を懸念し、「獣医に相談したら大丈夫とのことだった。飽きて山に帰りたくなるまで、自然の成り行きに任せます」と福岡さん。

 イノシシにも刷り込みがあるのかを含め、獣医も「聞いたことがない」。話題は1カ月余の〝牛歩〟を経て〝猪突猛進〟のごとく広がりつつある。