福岡県の水族館で育ったサンゴ 1年半ぶりに龍郷湾に

龍郷湾の海中でのサンゴの植え付け作業を行った(龍郷サンゴ部会提供写真)

1年半ぶりに龍郷湾に戻されたサンゴ個体(大きさは5~10㌢)

龍郷サンゴ部会 再生プロジェクトの一環

 約1年半前、福岡県福岡市の水族館「マリンワールド海の中道」に育成目的で貸し出されていた奄美大島の龍郷湾で分布するサンゴ(ミドリイシ)の個体が27日、奄美に戻り、再び同湾の海中に植え付けられた。龍郷町内のダイビング事業者による再生プロジェクトの一環。当初、親指ほどだった体長が2~3倍に成長した様子に関係者は目を見張り、資源回復に期待している。

 環境変化で減少した同湾のサンゴを増やそうと、町内のダイビング事業者でつくる「龍郷サンゴ部会」(前田聡代表、8会員)が10年前に発足。県から特別に許可(1日のみ、海域指定)をもらい、ブイなどに付いたミドリイシを採取。親指ほどの個体を育て、再び植え付けるため、試験海域や水槽での育成実験を長年続けている。

 その取り組みを聞きつけた同水族館関係者が昨年、サンゴの貸し出しを打診。同部会の快諾を受け、預かった個体は水温や水質、照度など適度に環境を整えたところ、予想以上に成長。リニューアルした展示室「九州の海」コーナーに設けられた「奄美のサンゴ礁」のブース内で育成した個体も公開されたという。

 一定程度の成長が確認できたとして、個体返却のため来島した水族館運営本部の垣野陽介主任は「海洋資源の回復に向け、引き続き活動に協力できたら」と話した。

 戻ったサンゴは同日、同部会メンバーが湾内海中に植え付け。前田代表は「適正環境で育った成果に驚いた。時間はかかるが、資源再生に尽力し、将来は教育活動にもつなげたい」と抱負。この日は再び水族館側に35個体を預けた。