天城町長選をふり返る

最終日の街頭演説で支持を求めた町長選の森田弘光氏陣営と同派議員候補たち=1日、天城町平土野で

「争点なき一騎打ち」
しこり解消を 森田新町政、27日に船出へ

 任期満了に伴う天城町長選挙(町議選同時執行)は2日に投開票が行われ、町職員・副町長の通算42年間の行政経験に立って「住んでよかった。暮らし満足度ナンバーワンのまちづくり」などを訴えた元副町長の森田弘光氏(67)=松原=が、元町議の柏木辰二氏(54)=瀬滝=を137票差で退け、初当選を果たした。明確な〝争点なき新人同士の一騎打ち〟で町を二分。森田氏には約48・4%の批判票にも謙虚に耳を傾けた舵取りが求められる。(同選取材班)
 
 □選挙戦の構図

 「基本理念の『緑豊かで活力ある住みよいまちづくり』が確実に前進。まだまだ課題はあるが、積み重ねてきた意思を引き継ぐ〝次の方〟に委ねたい」。新人同士の一騎打ちの伏線は今年3月定例町議会における現職大久幸助町長(3期目)の勇退表明。そして「森田副町長(当時)は、農政課長や総務課長を含め私を支えてくれた。残された課題も分かっている」との言及、いわゆる後継指名にあった。森田氏は同月末に副町長を辞し、組織固めに入っていた。

 この動きに対して町議4期16年目の柏木氏は9月2日に立候補を表明。「社会情勢は刻々と変化して住民の意識も多様化。地方自治は主体性と自立、時代の変化への対応が求められている」などとして、現職サイドの後継指名あり方を批判。同月6日に議員を辞し、一騎打ちの構図を確定させた。
 
 □争点なき一騎打ち
 
 各後援会活動の前哨戦、そして選挙戦入り後も、かつてのような国政選挙代理戦の様相を引きずった派閥対立はすっかり影を潜めた。現職の大久氏と元職の寿洋一郎氏が争った前回選(2014年)派閥から離合集散が進行。根本的には「寿氏派=柏木氏」だが、組織力を発揮する建設業界や町議候補の派閥割など動きが顕著化した戦いでもあった。

 選挙戦では、過去4人の町長の「側近」として手腕を振るい現在の実績を残した森田氏に対抗して、柏木氏は「町長後継者の指名」のあり方を批判。だが、政策面は農林水産業の振興対策をはじめ平土野港の整備拡充、同地区の活性化、世界自然遺産の推進―などでほぼ共通。「ドーム闘牛場」建設に至っては文言まで一致。明確な争点がうかがえない選挙戦となった。

 一方では同時執行の町議選(定数14に17人立候補)も含め、期日前投票への駆り出し合戦や同会場(町役場)駐車場での監視行為も散見された。さらには表面上の穏やさとは裏腹に、選挙戦終盤にかけては旧態依然としたきな臭いうわさがまたしてもささやかれ、課題を残した。
 
 □しこりの解消を

 初当選の歓喜から一夜明けた3日午前、森田氏は「感情的な部分を一朝一夕に解消することは難しいと思うが、きちんと政策を展開し、町民に寄り添った政治手腕を示すことで判断していただけると信じている」と語った。

 拮抗した一騎打ち激戦の末の半数近い48・4%の批判票。謙虚に耳を傾けていかに町民の対立感情・しこりの解消、融和につなげるか。決してぶれることのない名実ともに真価のある「住んでよかった。暮らし満足度ナンバーワンのまちづくり」―に期待したい。