「津之輝」お歳暮需要

「津之輝」お歳暮需要

台風による強風も防風垣を整備することで抑制。前年並みの収量が見込まれている元井農園の「津之輝」

専用の化粧箱に入れて全国に発送。お歳暮需要により予約は好調に推移した

 

台風被害、防風垣整備で抑制

 

 12月に入り奄美大島では新かんきつ「津之輝=つのかがやき=」の収穫、出荷が進められている。個別販売している農家のなかには11月に予約を受け付けたところ、お歳暮需要により完売となったところも。果肉は柔軟多汁とタンカンに近い食味の良さが人気だが、生産を安定させるには台風被害の抑制へ防風垣整備が求められている。

 津之輝は、「清見」に「興津早生」を掛け合わせたかんきつに、「アンコール」を掛け合わせてできた品種。奄美大島では2010年の導入以降、行政による苗木助成もあり栽培面積が増えつつあるが、水分管理が問われる裂果の発生のほか、今期は台風被害もあり、生産の安定が課題となっている。

 これまでの着果状況の考察から関係機関は栽培地として下場(平場)を中心に推進。奄美市住用町で約1㌶・約600本の津之輝を栽培している元井孝信さん=元井農園=の果樹園も国道沿いなどの下場にある。今期の生産状況について元井さんは「裂果(発生するとほとんどの果実が落下)は9月ごろに見られるようになったが、昨年に比べると今年は少ない。裂果対策では水分の管理がポイントだけに、敷き草を施して対応している」と語る。

 深刻だったのが台風被害。激甚災害指定となった台風24号による農業被害は、奄美では基幹作物のサトウキビを中心に大規模な被害となったが、元井さんの果樹園では山の上からの吹き返しによる強風が津之輝に影響。根が浅く上向きに成長するため強風を受けて2、3本倒れたほか、根が動き樹木が斜めに傾いた。元井さんは元の状態に起こし、客土を投入。強風被害が果実の品質に影響しないか心配されたものの、収穫時の糖度は11・5度、クエン酸は1・18で、津之輝本来の品質を保った。

 ただ11月ごろの果実熟期前には細かい裂果やヤガ(夜蛾)による被害が発生。果実が腐り生産量が低下することから、ヤガが嫌う殺虫剤などを含む液体を準備し対応した。

 元井さんは防風樹で、関係機関が推奨樹種としている「アデク」を導入。平均4㍍の高さまで成長し、作物を強風から守っているが、元井さんは「3列20㍍スパンで防風垣を整備する必要がある。津之輝は栽培が難しい作物であり、特に根が浅いため台風対策は強化しなければならない。産地づくりを進めるにあたり、行政などの関係機関は適した技術の普及へ栽培マニュアルの作成、まず防風垣を整備してからの苗木植付けを徹底しないと、奄美大島での産地づくりは前進しないのではないか」と指摘する。

 元井農園では12月5日に収穫をスタートし初出荷。現在、ほとんど収穫は終了しており、収量は前期同様約2㌧を見込んでいる。専用の化粧箱(3㌔箱、2L・Lサイズ)を準備し注文を受け付けたところ、7割は島外から注文があり既に完売。品質の良さからお歳暮の贈答用として人気の高さを示している。「需要のある年末に販売できるので魅力ある果樹作物。地元の人の方が津之輝を知らないだけに、適期収穫された完熟品の味の良さを味わってほしい」(元井農園)。