新時代あまみ 医療・福祉 中

サイトのリニューアルに取り組む坂元さん。使いやすさのほか、動画機能など新たな魅力が加わる

最も重要なセキュリティー対策

 2017年10月、坂元さんはNPO法人を立ち上げた。「特定非営利活動法人よこいと奄美」。70人余りの会員のほか、事業所(法人)契約しているところもあり、坂元さんが開発した情報交換サイトには奄美大島介護事業所協議会、介護支援専門員(ケアマネ)、訪問部会、短期入所部会などがグループで登録している。

 サイトについて坂元さんは「医療機関に勤務していた当時、そこのホームページ作成に取り組んだ経験がある。作成に必要なデジタル技術などの知識は独学。もともとこうした分野に興味があった。過去の経験や、サイボウズ(グループウェア)を実際に利用してきたことが現在のサイト開発に生きている」と話す。

 NPOの目的・事業をみてみよう。特定非営利活動として▽保健、医療または福祉の増進▽情報化社会の発展―を図る活動などを挙げており、事業としては福祉・介護・医療に関する「情報共有ネットワークの構築および運営」「情報化社会を構築するための普及啓発」「教育・研修」に取り組む。

 ▽情報保護

 インターネットのクラウドサービスを使ったサイトにより、身体の状態や体調などの情報を時間差なく多職種で共有できるが、最も重要なのはこうした個人情報の漏えいを防ぐセキュリティー対策だ。メールよりも漏えいリスクは低いとされているが、よこいと奄美では会員認証方式で、「ID・パスワード認証方式(会員が指定したIDおよびパスワードによる認証を受けることにより、サービスにログインすることが可能となる方式)」を採用。認証を受けた人しかサービスを利用できない仕組みだ。

 利用規約では、個人情報の取り扱いも明記。サービス提供により知り得た個人情報について、「当社は、ホームページ上に記載するプライバシーポリシー(個人情報保護方針)にのっとり、適正に取り扱う」。個人情報の管理・利用目的・第三者への開示・情報の禁止・安全対策をプライバシーポリシーで打ち出しており、個人情報保護の仕組みを構築し、個人情報保護を推進する姿勢をアピールしている。

 在宅医療・介護・福祉を利用する本人や家族が、自らに関係する情報が多職種間で共有されることに同意するのは、その情報が「他に(共有者以外)漏れることがない」という信頼が前提。それだけにサイトの運営で、情報保護の徹底・強化の実現が、今後の利用促進を図る上でも〝生命線〟となりそう。

 ▽幅広い利用へ

 「勤務する医療機関や介護事業所といった一つの枠の中で在宅ケアやサービスに取り組むよりも、複数の専門職がチームとなり連携して対応し他の専門職と交流することで刺激が得られる。それにより自らの技能や知識が向上する機会となる」。坂元さんは語る。

 在宅での医療・介護・福祉を展開するにあたりチームを形成する専門職。主治医、看護師、ケアマネ、ヘルパー、理学療法士や作業療法士といったリハビリ、福祉用具業者、薬剤師も加わる。まさに多職種が連携し対応するだけに、情報の共有は適切なケアやサービスに欠かせない手段と言える。そのためのツールが、坂元さんが開発した情報交換サイトだ。

 一般会員は無料、団体(事業所等)は有料にしている。サイト内では、まさに専門職それぞれをよこ糸でつなぐような関連するイベント情報や告知、関係機関・事業所などの電話番号、それに求人情報といった内容も掲載されている。運営するNPOでは、今月、新年と歩調を合わせるかのようにサイトのリニューアルに取り組む。

 その際、幅広い利用に向けては「使いやすさ」を追求する。「普段からパソコンやスマートフォンを使いこなしている人だけでなく、こうした機器が不慣れな人でも使えるサイトにしていきたい」。それは操作のしやすさ、簡素化だけではない。サイボウズの利用と異なり、奄美で開発されたサイトの強みは直接、使い方を説明できる点だろう。

 「サイトのリニューアル後には事業所などを回り、電子機器は苦手というヘルパーのみなさん等にも直接会い、使い方を実際に見せて、さまざまな質問・疑問にも丁寧に答えていきたい」。坂元さんは意欲的だ。

 リニューアルにあたっては動画機能も備える。NPOの理事の一人であり、現在、サイトに成年後見制度について投稿(書き込み)している勝村克彦さん=NPO法人あまみ成年後見センター理事長=は、「動画機能が加わったら、専門職を対象にした研修会や勉強会の模様を動画で記録し、その内容をサイトにアップできる。事業所の場合、こうした研修会や勉強会に参加するのは代表者やリーダーだけに、参加できなかった人もサイトを視聴することで新たな知識が得られるようになる。現場の意欲が高まるのではないか」と語り、期待感を示した。