「また町内で火災」不安増す

「また町内で火災」不安増す

龍郷町円で家屋や倉庫など5棟が焼ける火災が発生した。同町では火災の連続発生で町民に不安が広がっている

龍郷町円集落 家屋など密集、延焼リスク
町、健康面や心のケア対応へ

 「また町内で火事か」――。消火活動を見守る住民が嘆いて発した言葉だ。5日早朝に発生した龍郷町円の火災は、密集する木造家屋など5棟を延焼した。同町では昨年から火災が連続し、町民の間に不安の広がりも見られる。また町役場は今後も防災に気を抜かず、被災集落の高齢者などの身体面やメンタル面のケアに配慮する考えだ。

 円集落(70世帯、約150人)は同町北部の東シナ海沿岸部にあり夕日の名所「かがんばなトンネル」で有名。木造の家屋や倉庫が密集した集落で、火災が起きると延焼のリスクが大きい。

 村田貞雄区長は、「鍋の空焚きなどのぼやを除けば、10年以上住家の火災はなかった」と話し、「住民には日頃から防火意識を呼び掛けていたのだが…。不安が広がらないよう今後の対応を考えたい」と声を落とした。

 現場では当時、県道沿いや公民館の敷地に停車した消防車両からホースを連結して消火活動を実施。火災の発生時は風がなく、火の粉は熱により真上に上がっていた。

 消防活動にあたった男性(41)は「風が吹いていなかったのは幸いしたが、煙が周囲に広がり息苦しかった」と話した。

 同町では、昨年から火災発生が相次いでいる。10月には、円集落の西側の嘉渡集落で不審火による連続火災があり、住家・空き家合わせ9棟が全焼したほか、同12月は国道沿いの中勝集落で住家含む7棟が全焼した。消防などによると、円集落に近い幾里集落の畑で今月3日、火災(人的、建物被害なし)もあったという。

 集落内で店舗を営む女性(72)は店から離れた自宅で就寝中、知人に起こされたという。「目覚めて空を見ると赤く染まっていた。慌てて店に駆けつけた。火の手が上がった家から大きな炎が出ていて、恐怖を感じた」。

 消防などによると、村田和樹さん(59)と家族など4人が逃げる際に煙を吸ったほか、男性1人が右手に軽いやけどを負ったが命に別状はなく、病院で手当てを受けているという。

 同町の則敏光副町長は、「消防署員や消防団員は、万全の注意をはらっていたが、火災が発生してしまった。再度、気を抜くことなく防火に努めていきたい」と強調。また被災者等に配慮して、「円は高齢者の多い集落。役場保健師や地元の医療機関が連携し訪問するなどして健康面や心のケアにきめ細かく対応する」と説明した。

 警察と消防はこの日の午後から、現場検証を行い出火原因を調べている。