世界自然遺産セミナーin徳之島

中学生らも自由研究発表で課題を提起し「世界自然遺産登録の成功を」とアピール=10日、天城町

中学生ら「世界自然登録の成功を」
自由研究発表や専門家講演も

 【徳之島】世界自然遺産登録に向けて一層の気運醸成を図る「世界自然遺産セミナーin徳之島」(県主催)が10日、天城町防災センターであった。中学生の自由研究発表を通じた自然への思い、鳥類生態学・島嶼(しょ)生物学、エコツーリズムの両専門家による講演、保健所視点の啓発講話も。自然遺産の保全と活用のあり方、犬・猫の適正飼養やゴミ問題の現状など課題も共有しあった。

 幅広い世代の住民や関係機関・団体の関係者ら合わせ約180人が参加。藤本徳昭・県環境林務部部長はあいさつで「世界自然遺産登録は、世界から奄美の自然の価値を評価してもらい、人類共通の財産として次世代への継承を約束すること」と、適正な保全・活用取り組みに協力を求めた。

 研究発表では伊仙町立面縄中1年生3人(具伊爽花・田中彩世・富岡紅羽さん)が、夏休みに取り組んだ自由研究報告「徳之島の生態系調査~世界自然遺産を目指して私たちが考えたこと~」。講演には、髙木昌興氏(北海道大学大学院教授)が「奄美群島の野鳥を科学的に楽しもう」、松本毅氏(㈲屋久島野外活動総合センター代表取締役)が「屋久島におけるエコツーリズムの現状」を演題に講演。徳之島保健所は「私たちがすべき身近な環境保全活動」で課題提示した。

 面縄中の具伊さんら3人は、徳之島の特徴的な希少野生生物の資料および現地調査、ノネコ問題など自由研究の成果(県入賞)を発表。次代を担う立場から「森は自然がとても美しかったが、ゴミもたくさん落ちていた」、「アマミノクロウサギだけではなく、いろんな希少動物がネコやイヌに食べられている。安心して暮らせることを考えたい」など指摘。「世界自然遺産を成功させて美しい自然を残したい」とアピールした。

 徳之島保健所(亀之園明所長)側は、自然遺産登録への課題に①希少動物の保護(ノイヌ・ノネコ問題)や②環境保全(ゴミ・廃棄物の問題)。登録後の課題には、観光客増(国内外)による①持ち込まれる感染症の危険性②ハブ咬(こう)傷事故の増加なども提起。

 ほか、地域に比して異常に多い徳之島の犬の捕獲数(2017年度208匹)、逆に少ない返還数(16匹)の実態も挙げ、「捨てない・放し飼いをしない」の法律順守、「増えないよう不妊去勢手術、監察・注射済票を付ける」。市街地や山間部を問わず多いゴミ問題も指摘。同時に、効果的な啓発活動の強化対策の必要性もうかがわせた。

 樟南第二高校吹奏楽部がオープニング演奏を務め、セミナー終了後は、中高生ら「結シアター手舞」一行の島口ミュージカル「結-MUSUBI」の上演で楽しませた。