環境省、地域と協働活動

環境省、地域と協働活動

環境省職員が住民に外来種の実物を示して協働で駆除活動を行った(2月、宇検村石良集落)

 

住民の参画意識高めたい
世界自然遺産登録へ主体的姿勢を

 

 自然関係の担当で、環境省自然保護官事務所(奄美野生生物センター)の事業などの取材で気付いた点がある。以前は国の出先機関で立ち入りづらい先入観があったが、担当になってから見ると世界自然遺産登録に向けて住民との協働を重視していることだ。担当者は「何とかして、住民のモチベーション向上につなげたい」と取り組んでいる。

 同事務所は以前からも住民対象のワイルドライフセミナーや自然体験活動などを実施。参加した住民に普及啓発したり、各種の説明会や意見交換会もあったという。

 今年2月に「奄美群島国立公園」の管理計画作成の住民意見交換会(ワークショップ)が、奄美大島と徳之島の住民を対象に行われた。2017年3月に国内34番目の国立公園として誕生した同公園の管理計画作成は、世界自然遺産登録を見据えたもので「協働型管理」が特色だという。

 具体的には、地域の関係者が将来像(ビジョン)や方針などを共有しながら、環境省と地域で分担して取り組んで行く。ワークショップの参加状況は、▽2月3日=徳之島会場、約30人▽同4日=龍郷町会場、28人▽同5日=瀬戸内町会場、18人▽同6日=奄美市住用町会場、14人▽同7日=宇検村会場、28人だった。

 同事務所の二神紀彦首席自然保護官は、「会場にもよるが、住民に国立公園や世界自然遺産の意識の浸透が不十分。参加者の少なさが、関心の少なさにつながっているのだろう」と説明。「ワークショップに参加してもらった住民は関心のある住民。寄せられた意見は管理運営計画のたたき台にして、有識者の検討会で協議して管理運営計画(案)にまとめる」と見通しを示した。

 今後に向け「受け身で考える住民の参画意識を高めて各所に働きかけてもらい、それにより世界自然遺産などに関心を持ってもらいたい」と語った

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 世界自然遺産候補地の中核地域・湯湾岳麓の宇検村石良集落では2月に、同事務所が住民と協働での外来種駆除イベントを開催。活動に参加した千葉康人上席自然保護官は企画について、「奄美大島の住民は、自然との関わりが深い。意見交換会などで住民から、世界自然遺産登録に向けて何をやったら良いのかなど聞かれることがあったため」と話した。

 同事務所は、学校などに出前授業で外来種駆除活動は取り組んでいたという。住民との協働は初めてで、宇検村役場の協力を得て集落の月の清掃日に合わせて行われた。

 千葉さんは「他の地域でも住民との協働で、外来種駆除して自然保護の意識を醸成したい。手遅れだという人もいるが、住民にも守りたい場所や他人に見てもらいたい場所があると思う。合意してもらえれば、今後も協力して駆除していきたい」と語った。

 こうした住民との協働による自然保護は、昨年夏に一部で実現している。ウケジママルバネクワガタやウケユリなどの希少種が生息する瀬戸内町の請島では、同事務所が希少種保全パトロール事業を実施。島民が組織する「みのり会」が夜間パトロール(巡視)することで、希少種の盗掘防止や外来種の監視などを行う。

 今夏から秋にかけて、IUCN(国際自然保護連合)の現地調査が再び行われる。調査では「地元市町村民のやる気」も、重要なチェック項目になっているという。国や県任せでなく、遺産登録に向け主体的に取り組む姿勢が求められる。
                                            (松村智行)