新時代あまみ~ウナグ輝くまちづくり=上=

新時代あまみ~ウナグ輝くまちづくり=上=

HUB a nice d!の立役者・山本さん(左)とCAFEリミックスを切り盛りする林さん(右)

〝一カ所四役〟の古民家改修施設
子育てママの悩み解決きっかけに

瀬戸内町阿木名集落の国道58号線から、細い路地に入り海側に少し進むと、「HUB a nice d!」(ハブアナイスディ!、愛称・ハブディ)と書かれた真新しい看板が目に映る。同集落の山本美帆さんを中心に地域住民が空き家を改修し、昨年10月末にプレオープンさせた施設だ。▽チャレンジショップ▽コワーキングスペース▽レンタルスペース▽コミュニティースペース―の四役を一カ所で担っており、平日も子育てママたちをはじめ、地域住民らが多く訪れにぎわいを見せる。

山本さんがコーディネーターとして参画する「やまぐんまちづくり委員会」は、総務省の過疎地域等集落ネットワーク圏形成支援事業交付金を活用し、「繋がるやまぐん〝我が事・丸ごと〟支え愛コミュニティビジネス創出事業」を推進する。ハブディは事業の中で、地域の〝小さな拠点〟として整備された。

自身も子育てママでという山本さんは、「ママたちが子連れでゆっくりできる場所があれば」という思いから空き家の整備を決意。準備を進めるうちに地域住民から、高齢者も集まることができる場所を求める声も聞かれ、地域住民の憩いの場として利用できる場所に仕上がった。

 ◇ママたちのために

山本さんは「ママになってから仕事ができるか心配だった。だからこそ、『何かを始めたい』と思っている人のハードルを下げたい」と、施設にチャレンジショップの役割を持たせたきっかけを話す。今ではプレオープン当初から出店する「CAFEリミックス」に加え、12月に「呑み処tu―でぃ」が、2月に「土曜日のカレー」がそれぞれオープン。時間ごとに店が変わり、それぞれ異なる客層が訪れる。

リミックスのオーナー林菜津美さんは「調理師の仕事は夢だったので、実現してうれしい。ママたちがゆっくりと食事できるスペースになれば」と話す。取材に訪れた日も子育てママたちが、山本さんや林さんと笑顔で声を交わす姿が見られた。

チャレンジショップが営業していない時間帯にはノートパソコンを持って訪れるビジネス利用者も。このほかにもチャイ(紅茶の一種)講習会、カメラやハンドメイドの講座、祝いの席、サロン活動など島内外からのレンタルスペースとして活用する人も多いという。

コミュニティスペース(交流拠点)としての〝地域食堂〟も昨年12月にスタートした。「赤ちゃんからお年寄りまでが食事を囲んで交流する場があれば」と、同委員会が月1回の頻度で、カレー、豚汁などの親しみやすいメニューを提供する。毎回多くの集落住民が訪れ、一家団らんならぬ〝地域団らん〟を楽しむ。

同集落の谷口昭子さんはママ友同士子連れで、月に1~2回はハブディに足を運ぶという。「遊ぶスペースが施設内にあるため、子どもを遊ばせながらまったりとできるのが良い。地域食堂では地域の子どもたちと交流することができる。さまざまなジャンルのイベントも開かれていて、いろいろなことに興味が持てる」と話す。

 ◇本格オープンに向けて

事業は、地域拠点づくり(ハブディ整備)、地域食堂も含めた5事業を展開する。婦人会を中心とした地域住民が頭を突き合わせ加工品開発に取り組んだり、タンカン収穫を観光資源化するためにモニターツアーを開催したりと、多岐にわたる取り組みで地域活性化を目指す。

2月にあった同事業報告会では、すでに1種類の加工品が開発されたことや、モニターツアーの実施状況などが詳細に説明された。着目すべきは報告会の進められ方。委員会側の住民が一方的に話を進めるのではなく、課題や感想の記入を参加者に求め、フィードバックに利用するという。閉鎖的にならず、さまざまな意見を取り入れようとするハングリー精神が垣間見えた。

「『女性だから、ママだから』とできないことを考えるより、できることを考えるべき」。女性として地域活性化に積極的に参画し、その中核を担う山本さんは語る。ハブディの本格オープンは今月末の予定。山本さんは「プレオープンから約5か月。想像していた以上にいろいろな使われ方をされている」と振り返る。また、今後については「地域の声を大切にしながら、夢をかなえるような場所として使われるよう、発信力を高めたい。声を拾い上げるためのネットワークを作り、出店者同士のコミュニティーを作っていきたい」と語った。