知名町の黒田さん、生前葬行う

祭壇に飾られた遺影の横に立つ黒田寛之さん=10日、知名町=

家族に迷惑かけない新しい生き方を

 【沖永良部】知名町在住の黒田寛之さん(79)の生前葬が10日夜、同町屋子母集落公民館で行われた。島内外の知人ら約30人が出席。約1時間の葬式を終えた黒田さんは「自分が生きているうちにやっておけば、家族に苦労をかけなくて済む。これも一つの生き方」と笑顔で語った。

 静岡県で住職をしていた黒田さんは、隠居後、2009年に沖永良部へ移住。週に一度、地域住民に座禅を指導しながら仏教の教えを説いている。

 今年で80歳になるのを前に、お金をかけず、家族にも迷惑をかけない葬式の方法を広めたいと、自分の生前葬を執り行った。

 会場には、遺影を飾った祭壇と棺桶を準備。黒田さんは白装束を身につけて棺桶に入り、黒田さんの弟子の僧侶2人がお経を読んだ。

 弔辞で、同町在住の村上清さんは「和尚の話を聞くたびに心が和む。これからもたくさんのことを教えてほしい」と感謝の気持ちを伝えた。最後に、参加者が遺影に向かい焼香を上げた。

 式に続いて懇親会を開き、料理を食べながら楽しく過ごした。

 村野窪池さん(73)は「実際にやっているのを見ていいなと思った。子どもや孫に迷惑をかけたくない」と話した。

 黒田さんは「生前葬を終えたので『葬式をしない』という手紙を、今回参加できなかった友人たちに出したい。80歳になっても夢がある。これを機会に今後の計画を考えたい」と語った。