「田植え歌」ハーモニーこだま

「田植え歌」ハーモニーこだま

集落唯一の水田(約2㌃)であった前野民謡保存会主催の「田植え歌」実演交流会(提供写真)=20日、天城町前野(岡前)

民俗文化を後世に
天城町 前野民謡保存会

 【徳之島】天城町の前野民謡保存会(中水勝久会長)が主催する「田植え歌」=町指定無形民俗文化財=の実演会が20日、同集落唯一のミニ水田であった。子ども会や同育成会、岡前小職員など約50人が参加。軽快な歌掛けのハーモニーにのせて田植え作業を体験し、昔ながらの田園光景が再現された。

 田植え歌(唄)は琉球列島では徳之島にだけに伝わる伝統歌謡。上の句は男性、下の句は女性が掛け合いで唄ってハーモニーを醸し出す。自然発生的な仕事唄としては他に類のない独特な唄。新田(ミィータ)の田植え祝いや労働促進、儀礼的には豊じょう・予祝祈願、ユイワク(交換共同労働)の人集めの知恵―だったともされる。

 1965(昭和40)年代以降の減反政策によって前野集落からも水田が消滅。「稲作文化に根差した伝統芸能の伝承保存を」と76年に民謡保存会を結成。子ども会と同育成会(保護者)など対象の練習会を継続、伝承活動に取り組んでいる。

 初回実演会は2011年に同町「ユイの館」の体験用水田で開催。翌12年には町教育委員会が文化庁事業を活用、前野集落で約半世紀ぶりの水田(ハート形・約2㌃)を復活していた。

 9回目の今年は天候にも恵まれ、子ども会や保護者たちが泥にまみれながら、保存会員たちの太鼓と田植え歌にのせて田植えを体験。作業後は、お茶やおやつで異世代間〝畦道交流〟でもふれあった。

 町教委の具志堅亮学芸員(35)は「補助事業を機に長年継続していることは素晴らしい。町内最古の模範的な民謡保存会で、田植え歌を後世に伝えたい思いが強い」と話していた。