ICTプラザかさり

企業入居スペースなどを備えた情報関連企業の拠点施設となっている「ICTプラザかさり」

情報通信関連企業の新規就業を支援
開所から7年、14社利用 事業拡大の足掛かりとして活用

 奄美市が情報通信関連の起業や仕事誘致などを目的に2012年4月に開所した同市笠利町万屋の企業入居施設「ICTプラザかさり」は、開所から7年間でIT関連や翻訳業務などを行う企業14社の利用があり、新規就業の創出や地元雇用にもつながっている。全国からも注目されており、同施設を管理する市商工情報課によると、視察に訪れる自治体やIT関係者もいるという。

 同施設は旧笠利町が建設した「旧紬の館」を奄振事業の活用によって改修、高速通信が可能な光回線なども整備した。延べ床面積は約570平方㍍で、企業が入居するインキュベートルーム8部屋のほか、情報処理などに欠かせないサーバールームや、台風などによる停電に備え、24時間連続運転可能な自家発電機も備えてある。入口には電子ロック機能があり、セキュリティー面も強化している。

 使用料は入居から5年間、月額1万800円~3万6300円で、減免措置などを利用すると無料で利用することも可能だ。

 現在、8室のうち7室で利用があり、地元の新規企業のほか、東京や神奈川、大阪市に本社を置くIT関連企業が、事務所として利用、ソフトウェアの開発や企業のウエブデザインを手掛けるなどしている。

 大阪から進出後、本社を同施設に移転させた企業があるほか、同施設を足掛かりに事業を拡大、奄美市名瀬に事務所を構えた企業もある。

 同市名瀬末広町で翻訳業「百造工房」を営む井上真三基さん(50)は、2002年に東京からIターンし、龍郷町赤尾木の自宅で翻訳の仕事をしていたところ、知人の紹介で13年4月から14年7月まで同施設を利用した。「入居によって異業種の人たちとも知り合えた。名瀬に事務所を構えることができたのも、プラザかさりでの経験があったから」と話すなど、入居が事業拡大へとつながったとの思いは強い。

 同施設では、IT関連情報や起業などに精通したマネージャーも配置し、入居者を支援している。井上さんが事務所を名瀬に移転した時も、事業の収支計画などを相談したといい、「うまく背中を押してもらえた。地元で起業を考えている若者などの人材育成にも生かせるのでは」と話した。

 空室となっているスペースは現在、ワーキングスペースとして、Wi-Fiなどを整備、一時的な利用にも対応しており、市商工情報課は「奄美空港から近いこともあり、出張や休暇旅行などで来島した人の利用もある。一時的な利用で、施設の存在を知ることで、奄美での起業につながれば」と期待している。