奄美大島の陸上自衛隊=上=

瀬戸内分屯地に配備された「地対艦誘導ミサイル(SSM)」

迎撃ミサイルを配備
中国脅威に 南西諸島防衛ライン

 防衛省陸上自衛隊の奄美駐屯地(奄美市名瀬大熊地区)、瀬戸内分屯地(瀬戸内町節子地区)が3月26日に開設された。同省が南西諸島で進める陸自部隊配備計画は、中国の海洋進出などの脅威を見据え、抑止力と対処力を持った防衛ラインの構築が狙い。「奄美警備隊」の新編、南西諸島初の地対艦ミサイル配備など組織の概要が徐々に明らかになってきた。

 この防衛ラインは「防衛力の空白地帯解消」と位置づけ、東シナ海で活動を活発化させる中国の軍事増強、緊迫化する北朝鮮情勢などを念頭に、有事への迅速な対処、展開が目的。奄美の両施設に共通する「迎撃ミサイルシステム」配備がそれを物語る。奄美駐屯地の開設セレモニーが行われた同31日、陸自側は装備品の一部、施設などを報道陣に公開した。

 奄美駐屯地(平田浩二司令)の施設面積は50・5㌶。警備部隊230人、03式中距離地対空誘導ミサイル(=中SAM)運用部隊「第344高射中隊」60人など約350人が常駐する。

 瀬戸内分屯地(古場太佑司令)は施設面積48・3㌶で、そのうちミサイルや弾薬の貯蔵庫地区(火薬庫)は30・7㌶。警備部隊130人、12式地対艦誘導ミサイル(=SSM)運用部隊「第301同ミサイル中隊」60人など約210人が常駐する。

 迎撃ミサイルについて、中SAMは、主に敵の巡航ミサイルや航空機の攻撃から駐屯地を守るため国産開発された。垂直発射方式で車載化され、ミサイル規格は長さ4・9㍍、直径32㌢、重さ520㌔。複数の目標に対処するレーダーを搭載している。

 SSMは、88式から改良した最新式で三菱重工業製。ミサイル規格は長さ5㍍、直径35㌢、重さ700㌔。日本が唯一保持し、米軍も注目。昨年7月ハワイで行われたリムパック(環太平洋共同訓練)参加実績もある。

 そのほか、中距離多目的ミサイル(規格長さ1・4㍍、重さ26㌔)を搭載した車両も公開。上陸用艦船や水陸両用車、装甲車、構造物などに対する火力とした。

 中SAM、SSMは南西防衛強化で進める宮古島、石垣島の警備隊地での配備を予定しており、奄美大島はそれに先駆けて配備されたことで国内外から関心を集めている。

 報道陣の取材に応じた同広報は、今後の活動方針などを説明。3月までに隊庁舎や厚生施設や燃料施設などが完成し、今後はグラウンドや射撃訓練場(奄美)、火薬庫(瀬戸内)など順次、建設していくとした。

 一方、警備隊を災害派遣する場合のエリアは奄美大島と喜界島。施設公開イベントの前向きな検討、自治体主催による災害訓練の参加意向は早々に表明しているが、施設外や総合演習での訓練展開について陸自側は「可能性はゼロではない」「運営に関わるため、差し控えたい」などと言葉をにごす。

 また瀬戸内分屯地の施設面積がヤフードーム6・9個分となる、巨大な貯蔵施設の存在に記者の質問が相次いだ。「島内の武器弾薬のための備蓄か」「南西諸島で展開する他警備隊や今後の共同訓練で使用する可能性は」――。どれも回答はなかった。なお配備された中SAMなど必要な量は格納済み。今後拡張の計画はないという。

 駐屯地整備に計上した事業総額は2019年度までに約731・1億円(予算ベース)に上る。